六訂版 家庭医学大全科 「真菌性髄膜炎」の解説
真菌性髄膜炎
しんきんせいずいまくえん
Fungal meningitis
(脳・神経・筋の病気)
どんな病気か
原因は何か
病原菌にはクリプトコッカス、カンジダ、ムコール、アスペルギルスなどがあげられますが、クリプトコッカス髄膜炎の頻度が最も高いとされています。クリプトコッカスは、鳥類の排泄物、とくにハトの糞で増殖することが知られています。多くの場合、肺で初感染巣がつくられ、血液により運ばれ(血行性)、
症状の現れ方
クリプトコッカス髄膜炎は亜急性、慢性髄膜炎として起こることが知られています。脳実質内に
検査と診断
髄液圧が上昇し、細胞数増加、蛋白増加、糖の減少(20~35㎎/㎗)など結核性髄膜炎に類似した所見を示します。頭部CT、MRIでは、時に水頭症の所見や肉芽腫を反映した低吸収域・異常信号病変がみられます。
髄液中の菌の検出が重要で、クリプトコッカス
治療の方法
アムホテリシンBの点滴静注が有効で、5~10㎎/日から始め、0.5~1㎎/㎏/日まで徐々に増やしてゆきます。5フルシトシン8g/日(経口)との併用も行われます。また、フルコナゾール(200~400㎎/日)の点滴静注(経口も可能)は副作用も少なく、第二選択薬として用いられます。アムホテリシンBの副作用には局所の静脈炎、全身反応(発熱、嘔吐、
病気に気づいたらどうする
亜急性の発症で、発熱、頭痛、嘔吐などがみられた場合は、神経内科、内科、小児科の医師に相談してください。
庄司 紘史
真菌性髄膜炎
しんきんせいずいまくえん
Fungal meningitis
(感染症)
どんな感染症か
主に、クリプトコックス・ネオフォルマンスという真菌が感染して起こります。この菌は、土壌や鳥類の排泄物のなかに
ちりやほこりとともに空気中に浮遊した菌を吸い込むと、ヒトの肺に感染することがあります。健康な人は、肺に感染しても無症状のままで発症することはありません(
このような感染の様式を
そのほかの真菌による髄膜炎はまれですが、コクシジオイデスという真菌が原因で起こることもあります。この菌による感染は、北米アリゾナの砂漠地帯など特定の地域に限られますが、健康な人でも肺に感染し、髄膜炎を発症する可能性があり、実際に渡航者が発症したというケースもあります。
症状の現れ方
真菌性髄膜炎になると、細菌やウイルスによる髄膜炎と同様に頭痛、吐き気・嘔吐、
真菌が肺にも合併して感染している場合には、
治療の方法
抗真菌薬のアムホテリシンB、フルシトシン、ミコナゾール、フルコナゾール、イトラコナゾールが用いられます。アムホテリシンBの単独投与またはフルシトシンとの併用、あるいはフルコナゾールの使用が一般的です。クリプトコックスが原因の髄膜炎には、ミカファンギンは有効ではありません。
病気に気づいたらどうする
特別な予防法はありませんが、特有の髄膜刺激症状に気がついたら、すみやかに専門医で精密検査をしてもらいましょう。前述したように、基礎疾患をもつリスクの高い人は、持続的に様子をみながら真菌症の早期診断に努めることが大切です。
新見 昌一
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報