日本大百科全書(ニッポニカ) 「碝石」の意味・わかりやすい解説
碝石
さざれいし
現存する日本最古の観賞石。清和(せいわ)天皇の863年(貞観5)の春、紀伊国(和歌山県)の千里の浜で浦人が海から拾い、貴人に献じたという言い伝えがある。もっとも古くは『伊勢(いせ)物語』に記載されている。のちに後醍醐(ごだいご)天皇の時代(1318~39)には中納言(ちゅうなごん)公忠が秘蔵していたが、勅勘によって安芸(あき)国(広島県)に左遷されたとき、守護武田伊豆守氏信(いずのかみうじのぶ)の要請により城中に納めた。このとき、雷光が激しく鳴りやまず、氏信は驚いて福王寺に献納したという。現在も広島市可部(かべ)町の同寺に秘蔵されている。ただし、寺伝1巻には「朝廷より当山に下賜せらる」とある。左右70センチメートル、群がる岩山の姿をしている。
[村田圭司]