神体山(読み)しんたいさん

改訂新版 世界大百科事典 「神体山」の意味・わかりやすい解説

神体山 (しんたいさん)

神体として直接崇拝の対象とされる山をいう。山岳崇拝そのものは原始古代社会の宗教文化に共通するが,神体山の称は日本の神社祭祀や修験道などが歴史を通じて崇拝や信仰の対象としてきた各地の名山高岳を改めて共通に表現する言葉として近代に使われるようになった。神体という語は平安中期に成立したが,山を神体とする表現は山崎闇斎の《垂加神道初重伝》を最初にして江戸中期に奈良県の三輪山をいうようになり,神体山の用語も1871年(明治4)に大神(おおみわ)神社が奈良県あての口上書に三輪山を指して使ったのが最初とされる。しかし類語としては古く《古事記》《日本書紀》や《万葉集》にミムロヤマ(御諸,三諸,御室)があり,また《万葉集》や《出雲国風土記》に広く使われているカンナビ,カンナビヤマ(神奈備)がある。男体山,女体山の名も古い類語と考えられる。古来山を神体とする祭祀の原型は全国各地の祭祀遺跡や古社に見いだされるが,現在も山を直接祭祀する社殿形式を存続する著名な神社は,奈良県の大神神社,長野県の諏訪大社および埼玉県の金鑽(かなさな)神社である。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の神体山の言及

【神奈備】より

…語源には諸説があって決めがたいが,〈かんな〉を〈神の〉の意として〈び(備,火,樋)〉の原義を論じるものが多く,ここでは〈辺〉に通じる〈場所〉の意としておく。《延喜式》の出雲国造神賀詞(かむよごと)には〈大御和乃神奈備〉〈葛木乃鴨乃神奈備〉〈飛鳥乃神奈備〉,《万葉集》巻十一にも〈神名火にひもろぎ立てて斎へども〉とあって,祭場または神域の意にとれるが,ほかに同集には〈三諸乃かんなび山〉2例,〈かんなびの三諸(之)山(神)〉4例,〈かんなびの伊波瀬(磐瀬)之社〉2例が見え,《出雲国風土記》に〈かんなび山〉4例,《延喜式》神名帳に〈かんなび神社〉4例,《三代実録》に〈かんなび神〉2例などがあって,いずれも神体山そのものか神体山に関係ある神または神社をさす。かんなび山は一般に人里に近く笠を伏せたような低い独立峰で,樹木に覆われて山中に磐座(いわくら)や磐境(いわさか)など祭祀遺跡を思わせるもののある場合が多い。…

※「神体山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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