出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
奈良盆地東南部,桜井市の北部にある山。標高467m。美和山などとも記し,三諸(みもろ)山(御諸山)ともいう。南は初瀬川,北は巻向(まきむく)川で限られ,背後には巻向山,初瀬山が連なる。年経た松杉で覆われた端正な円錐形の山であるが,頂上部が斑レイ岩の堅岩より成り,火山ではない。西山麓には神殿をもたずこの山を神体とする大神(おおみわ)神社があり,山裾を縫って山辺の道が巻向,石上(いそのかみ)へと続いている。《古事記》《日本書紀》には三輪山をめぐるさまざまの伝承がみえるが,三輪山の山頂が舞台となる崇神天皇の後継者を決める際の夢占い伝承,三輪山の神と倭迹迹日百襲姫(やまとととびももそひめ)命との神人通婚説話など,ヤマト王権とのかかわりの深さを物語るものが少なくない。山中,山麓にみられる祭祀遺跡や周辺地域に点在する前期大型古墳ほかの多様な遺跡などからも,この山の周辺一帯は古代の政治文化の中心であったと考えられる。三輪山信仰は縄文・弥生時代にもさかのぼるとみられるが,ヤマト王権と三輪山祭祀との関係が深まることによって神山としての地位が強められ,中近世を通じて神聖視され今日なおその趣をとどめている。
執筆者:舟尾 好正
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奈良県北部、桜井市にある山。標高467メートル。大和(やまと)高原南西端に位置し、東側の巻向(まきむく)山、初瀬(はせ)山と尾根続きになっている。山体は花崗(かこう)岩類、頂上部は角閃斑糲(かくせんはんれい)岩からなる。奈良盆地側から見ると松の木に覆われた円錐(えんすい)形の山であるが、火山ではなく侵食から残ったもの。古来信仰の中心で、西麓(せいろく)に三輪山を神体とする大和一宮(いちのみや)の大神神社(おおみわじんじゃ)が鎮座する。山中には三段に分かれて山を取り巻く「磐座(いわくら)」と称する巨石群がある。古歌に多く詠まれ、額田王(ぬかたのおおきみ)の「三輪山をしかも隠すか雲だにもこころあらなも隠さふべしや」(『万葉集』巻1)は有名である。大和青垣(あおがき)国定公園域。
[菊地一郎]
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美和山・御諸山(みもろやま)・三諸山とも。奈良県桜井市にある山。標高467m。秀麗な円錐形の山容で,西麓に鎮座する大神(おおみわ)神社の神体山。「延喜式」神名帳に大神大物主(おおものぬし)神社とあるように祭神は大物主神で,孝霊天皇の皇女倭迹迹日百襲姫(やまとととひももそひめ)命(「日本書紀」)あるいは活玉依毘売(いくたまよりひめ)(「古事記」)を妻にしたといい,その子で三輪君(みわのきみ)の始祖の大田田根子(たねこ)が祭ったと伝える。大己貴(おおなむち)神の幸魂(さきみたま)・奇魂(くしみたま)が大三輪神であるともいう。三輪山山麓一帯は三輪の山本とよばれる。
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…歴史的には,最も古式の信仰形態をとどめる神社として有名。すなわち,大和盆地の南東に麗姿を示す三輪山を神体とし,これを遥拝する。祭神は,《古事記》には〈意富美和(おほみわ)之大神〉,《日本書紀》では〈大物主大神〉とされる。…
…山岳崇拝そのものは原始古代社会の宗教文化に共通するが,神体山の称は日本の神社祭祀や修験道などが歴史を通じて崇拝や信仰の対象としてきた各地の名山高岳を改めて共通に表現する言葉として近代に使われるようになった。神体という語は平安中期に成立したが,山を神体とする表現は山崎闇斎の《垂加神道初重伝》を最初にして江戸中期に奈良県の三輪山をいうようになり,神体山の用語も1871年(明治4)に大神(おおみわ)神社が奈良県あての口上書に三輪山を指して使ったのが最初とされる。しかし類語としては古く《古事記》《日本書紀》や《万葉集》にミムロヤマ(御諸,三諸,御室)があり,また《万葉集》や《出雲国風土記》に広く使われているカンナビ,カンナビヤマ(神奈備)がある。…
…奈良県桜井市北部,三輪山のふもとの大神(おおみわ)神社(大和国一宮)などのある一帯の大字名。神体山として信仰された三輪山の山腹には奥津,中津,辺津の三つの磐座(いわくら)の巨石群も残る,初期大和政権とのかかわりの深い地域である。…
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