神をまつる神聖な場所。語源には諸説があって決めがたいが,〈かんな〉を〈神の〉の意として〈び(備,火,樋)〉の原義を論じるものが多く,ここでは〈辺〉に通じる〈場所〉の意としておく。《延喜式》の出雲国造神賀詞(かむよごと)には〈大御和乃神奈備〉〈葛木乃鴨乃神奈備〉〈飛鳥乃神奈備〉,《万葉集》巻十一にも〈神名火にひもろぎ立てて斎へども〉とあって,祭場または神域の意にとれるが,ほかに同集には〈三諸乃かんなび山〉2例,〈かんなびの三諸(之)山(神)〉4例,〈かんなびの伊波瀬(磐瀬)之社〉2例が見え,《出雲国風土記》に〈かんなび山〉4例,《延喜式》神名帳に〈かんなび神社〉4例,《三代実録》に〈かんなび神〉2例などがあって,いずれも神体山そのものか神体山に関係ある神または神社をさす。かんなび山は一般に人里に近く笠を伏せたような低い独立峰で,樹木に覆われて山中に磐座(いわくら)や磐境(いわさか)など祭祀遺跡を思わせるもののある場合が多い。
執筆者:薗田 稔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
古代において神霊の鎮まる場所で、小山や森のような所と考えられる。神名樋、神名火、甘南備などとも書く。「かんなび」の語義については、(1)神の森の転訛(てんか)、(2)神並び、(3)朝鮮語ナムNamu(木)からおこり、神木の意、(4)神隠(かんなば)りの意など、古来種々の説があるが、(4)の説が妥当と考えられる。「かんなび山」の名称をもつ山は諸国にあったが、大和(やまと)の三輪山(みわやま)(奈良県桜井市)がもっとも著名である。このほか大和(奈良県)、出雲(いずも)(島根県)に多いため、出雲系の神を祀(まつ)ったものであろうとする説が有力である。大場磐雄(おおばいわお)は、この山容が円錐(えんすい)形または笠(かさ)形の美しい姿をして目につきやすいので、神霊が宿るにふさわしいものと考えている。
[亀井正道]
…一般には,神が鎮座する本殿,神を礼拝しさまざまな儀礼を行う拝殿,本殿・拝殿などを囲む瑞垣(みずがき),神域への門に相当する鳥居などからなり,そのほかに神宝を納める宝殿,参拝者が心身を浄めるための手水舎(ちようずや),神に奉納する神楽(かぐら)を奏する神楽殿,神官の執務のための社務所,神苑などさまざまな施設を併せている。古い時代には,おそれかしこんでまつられる神々は,人間の住む所から遠く離れた世界に住んでいると考えられていたので,神々をまつるためには,高い山の頂,大きい森の中などで神々を迎える準備をし,そこを〈神奈備(かんなび)〉と呼び,大きい岩石,高い樹木などを神々が寄りつくものと考えて,〈神籬(ひもろぎ)〉〈磐座・磐境(いわくらいわさか)〉などと呼んだ。その後,建築技術が発達するにつれて,人間が住むみや(宮),みあらか(御殿)に擬して神宮,神社を建造するようになったと考えられる。…
…神体という語は平安中期に成立したが,山を神体とする表現は山崎闇斎の《垂加神道初重伝》を最初にして江戸中期に奈良県の三輪山をいうようになり,神体山の用語も1871年(明治4)に大神(おおみわ)神社が奈良県あての口上書に三輪山を指して使ったのが最初とされる。しかし類語としては古く《古事記》《日本書紀》や《万葉集》にミムロヤマ(御諸,三諸,御室)があり,また《万葉集》や《出雲国風土記》に広く使われているカンナビ,カンナビヤマ(神奈備)がある。男体山,女体山の名も古い類語と考えられる。…
※「神奈備」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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