神体(読み)シンタイ

デジタル大辞泉 「神体」の意味・読み・例文・類語

しん‐たい【神体】

神霊が宿っているものとして神社などに祭り礼拝対象とする神聖な物体古代では山岳巨岩大木などが神体または神の座として考えられたが、今日では鏡・剣・玉・ほこ御幣影像などが用いられることが多い。みたましろ。

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精選版 日本国語大辞典 「神体」の意味・読み・例文・類語

しん‐たい【神体】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 神のすがた。神の本体。また、神霊の宿るもの。または象徴として、礼拝の対象としてまつる鏡・剣・玉・鉾(ほこ)・像などの物体。みたましろ。霊体。御神体。
    1. [初出の実例]「件の大蛇は日向国にあがめられ給へる高知尾の明神の神体也」(出典:平家物語(13C前)八)
    2. [その他の文献]〔邢邵‐冀州刺史封隆之碑〕
  3. 能楽の脇能で、神にふさわしい性格、または姿形。
    1. [初出の実例]「何となく怒れる粧ひあれば、神体(しんたい)によりて、鬼懸りにならんも」(出典:風姿花伝(1400‐02頃)二)

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改訂新版 世界大百科事典 「神体」の意味・わかりやすい解説

神体 (しんたい)

神道の祭りや拝礼にあたってその対象となるものを神そのものと仰ぐ場合にいう。神体とは神自身という意味で,古くは《大倭神社注進状》《伊呂波字類抄》《釈日本紀》などに見え,平安中期ごろからの用語とされる。類語としては,〈神体形(かみのみかた)〉や〈霊御形(みたまのみかた)〉が神霊の宿る物体の意味,〈御正体(みしようたい)〉〈御体(ぎよたい)〉は正真正銘の神体の意味となる。しかし記紀にいうモノザネ(物実,物根)や風土記逸文でのシルシ(表)のように,本来は特殊な玉石,岩,樹木あるいは高山名岳など印象の強い自然の物体に神霊の内在や降臨をみて祭祀する対象としたが,やがて祭祀の場でこれらを装飾したり奉納したりする人工の宝物,すなわち鏡,玉,剣,鉾,鈴,織布などが神体化し,神社建築が営まれるにしたがって,これらを社殿の奥深くに収めるようになった。伊勢神宮の八咫鏡(やたのかがみ)や熱田神宮草薙剣(くさなぎのつるぎ)が伝承上有名だが,歴史的にはさらに神体を収める容器が神霊を宿すとみなす形が目だってきた。これを一般に璽筥(しるしのはこ)というが,伊勢神宮などでは御樋代(おひしろ),さらにそれを収めるものを御船代(みふなしろ)という。また神体も祭神ゆかりの品々がそれとみなされ,たとえば武神の弓矢刀剣や鉾や鎧,御歳神や稲荷神の稲束や稲俵,竈神のかまどや釜,男女の神格によっては笏,扇,櫛,衣装など多岐にわたっている。中世からは仏像仏画の影響を受けて神体を人格化し,八幡神などのように僧形や俗体(男女貴人)の神像をかたどる木彫や絵画をまつる例が増え,さらに当時の神仏習合様式として御正体の鏡に本地仏を示す梵字や仏具や仏体を刻んだり(鏡像),仏像そのものを神体とする神社も少なくなかったが,近世後期からの神仏分離によって今日ではその多くが神体から除外されてしまった。近代の神社祭祀では御霊代(みたましろ)の名で神霊を宿す依代(よりしろ)を対象とするのが原則だが,神殿に収められた神体だけは仏教寺院の本尊開帳のように公開することはない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「神体」の意味・わかりやすい解説

神体
しんたい

神霊の宿る物体のことで、それは神そのもの、神の本体として礼拝の対象物となる。御霊代(みたましろ)、御正体(みしょうたい)、霊御形(みたまのみかた)ともいう。神籬(ひもろぎ)、磐境(いわさか)、磐座(いわくら)に神霊を招き、それを礼拝の対象物として祭祀(さいし)を行うことは、古典にもみえ、祭祀遺跡としても認められる。また、聖なる山を神体山と称して礼拝したり、特別な滝や泉を祭祀の対象となしている。これらはいずれも自然物であるが、礼拝者にとっては神体とみなされる。社殿内の神体は、鏡が多い。神像彫刻や神像画、あるいは玉や石もある。そのほか弓、矢、剣(つるぎ)、矛(ほこ)などがあり、これらは兵器といわれるが、祭祀具の一種である。仏・菩薩(ぼさつ)や沙門(しゃもん)像を神体とした場合もある。これは本地垂迹(ほんじすいじゃく)思想によるもので、多くは祭神の本地仏である。特殊な例では釜(かま)や枕(まくら)、鈴、笏(しゃく)などを神体としている神社もある。また、木札に神名を記して神体とする場合もある。1868年(慶応4)の神仏分離令以後は、御幣(ごへい)を神体とする神社が増えた。一般に現在の神社は御幣を神体としている。このように、さまざまな神体があるが、とりわけ鏡は代表的で、一名御正体とよばれる。鏡面に神道(しんとう)的な図像や仏・菩薩像や権現(ごんげん)像などを毛彫りにした優品もある。なお、神体を納める容器を樋代(ひしろ)ないし璽筥(しるしのはこ)と称し、樋代を安置するものを船代(ふなしろ)という。

[三橋 健]

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百科事典マイペディア 「神体」の意味・わかりやすい解説

神体【しんたい】

神霊の宿る神聖な物体。神道での礼拝の対象。霊代(みたましろ)・御正体(みしょうたい)とも。神社の本殿などに奉安する。最も古くは,奈良の三輪山や富士山などのように,山そのものを神体とする例があるが,一般には自然物では岩石,樹木など,加工品では鏡,玉,剣,御幣,神像(絵画,彫刻,鋳造物)など。

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普及版 字通 「神体」の読み・字形・画数・意味

【神体】しんたい

心身。

字通「神」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の神体の言及

【神道】より


[神社と神官]
 祭りのたびに神々を迎える信仰のもとでは,神々が来臨する磐座(いわくら)・磐境(いわさか),祭りが行われる森や山などが神社であり,神殿は作られない場合が多かった。しかし,建築の発達につれて,神体,御霊代(みたましろ),神宝などを安置する秀倉(ほくら)や,神をまつる人々がこもって潔斎をするための建物が建てられるようになると,前者は本殿へ,後者は幣殿・拝殿へと発展し,それを囲む垣,神域を表示しその入口を示す鳥居,神饌を調理する御饌殿(みけでん),参拝者が身を浄める御手洗(みたらし)をはじめ種々の施設が加わって,神社の形が整った。神殿の建築は,穀物倉を原型とする伊勢神宮と,住宅に由来する出雲大社の神殿が代表的なもので,後に寺院や宮殿の形式をとり入れながら,数々の日本独特の様式が生み出された。…

【性器崇拝】より

…また,インド,ネパール,インドネシアなどヒンドゥー文化圏の各地では,ヒンドゥー教の主神の一つであるシバ神を象徴した男根像をまつって,多産や豊穣を祈願する風習が顕著にみられる。 日本の民俗文化のなかにも,男女の生殖器を御神体とする民間信仰が多くみられる。岩手県遠野地方に,男根を神体とし,信者たちは毎年男根形のものを奉納するという駒形神社がある。…

※「神体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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