稚児草紙(読み)ちごぞうし

改訂新版 世界大百科事典 「稚児草紙」の意味・わかりやすい解説

稚児草紙 (ちごぞうし)

中世僧院で流行した僧侶稚児との男色に取材した鎌倉時代の絵巻で,醍醐寺三宝院に所蔵される。1巻で詞5段,絵5段から成り,各画面はいずれも僧と稚児の秘戯の図で,画中に2人の対話を書き入れている。斎宮滝口武士,平致光(むねみつ)の秘戯を描いた《小柴垣草紙》(鎌倉時代)などとともに,絵巻の中で異色のジャンルをなす。奥書に元亨元年(1321)書写とあり,繊細な描写やおだやかな彩色などこの時代の絵巻の特色を示し,それがあらわな性描写を和らげている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の稚児草紙の言及

【春画】より

…あからさまな秘戯の図ではなく,入浴の場面など女性の裸体を見せる好色的な絵は,別に〈あぶな絵〉と称して区別している。《古今著聞集》にも〈ふるき上手どもの書きて候おそくづの絵〉と記すように,落書のようなものではなしに専門の画家による春画の歴史はかなり古く,中世に入れば《小柴垣草紙(こしばがきぞうし)》(13世紀),《稚児草紙》(14世紀,鎌倉末期)など絵巻物の傑作を生んでいる。合戦に出陣する武士の魔除けとして,嫁入りの女性の性教育用として,あるいは純然たる楽しみのために,各時代,各派の画家の手がけるところであったが,江戸時代に入ると浮世絵師がもっとも熱心にこれの作画に当たった。…

※「稚児草紙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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