突掛(読み)つっかける

精選版 日本国語大辞典 「突掛」の意味・読み・例文・類語

つっ‐か・ける【突掛】

[1] 〘他カ下一〙 つっか・く 〘他カ下二〙 (「つきかける(突掛)」の変化したもの)
① いきおいよくことを行なう。一気にする。
※虎寛本狂言・悪太郎(室町末‐近世初)「つっかけてたべましたによって、ただひいやりとばかり致いて、風味を覚へませぬ」
② 相手のさそうとする杯をかえして、もう一度飲むように強いる。おさえる。
茶屋諸分調方記(1693)九「のんでさすに今一つとしいるを、おさへるといふなり。又つっかける共云」
③ 掛けてつり下げる。たれ下げる。また、ひっかけるようにして、持ち上げる。
咄本・無事志有意(1798)孝行「前へ飛拍子、帯へつっかけてさしあげられ」
歌舞伎・与話情浮名横櫛(切られ与三)(1853)序幕「この襦袢をそこらへつっかけておいてくれ」
④ 他人に用を押しつける。
履物を無造作にはく。つまさきにちょっとかけてはく。
※雑俳・末摘花(1776‐1801)三「ぼたもちを食い毛せったをつっかける」
⑥ つきあてる。
※俳諧・八番日記‐文政三年(1820)九月「横槌に尻つっかけて菊の花」
相撲の仕切りの際、呼吸が合わず相手より先に立ち上がりかける。また、相手に対し取組み体勢にはいろうとする。
※相撲講話(1919)〈日本青年教育会〉相撲噂の種「呼吸も合はないのに突っかけると、丈(せい)が高いので手が伸びて相手の臀(しり)のあたりに手を滑らし」
⑧ 相手を目がけて突く。
※相撲講話(1919)〈日本青年教育会〉駒ケ嶽の凋落太刀山独舞台「立上るや、太刀例の如く突(ツ)っかけるを、駒双筈にあてて鋭く押す」
[2] 〘自カ下一〙 つっか・く 〘自カ下二〙
① 強い感情や涙などが急に突き上げられたように外に出て来そうになる。
浄瑠璃・近江源氏先陣館(1769)九「得忘れぬとどうど伏し歎けばさすが恩愛の、涙は胸につっかけながら」
② おしかける。
春泥(1928)〈久保田万太郎〉五「果してその一と幕が評判になり日々見物は突ッかけた」

つっ‐かけ【突掛】

〘名〙
① 他のことをしないで、ただちにそのことをすること。とっかかり。
※雑俳・柳筥(1783‐86)初「つっかけに先づ医者格がはきき也」
物事のしはじめ。とっかかり。
洒落本・郭中掃除雑編(1777)「面白くなったらばつっかけより茶屋へ行が面白く」
③ 歌舞伎の下座音楽の一つ。時代物で、重要な登場人物が、花道から勢い込んではなばなしく登場するときなど、切迫感を出すのに用いる大・小鼓の鳴物。能管・太鼓のはいるときもある。
※歌舞伎・染替蝶桔梗(1816)一番「『謀叛の張本武智光秀、御大将へ見参々々』トつっかけになり」
④ 「つっかけぞうり(突掛草履)」の略。また、足の指先につっかけてはく手軽なはきもの。サンダルの類。
※歌舞伎・宇都宮紅葉釣衾宇都宮釣天井)(1874)二幕「『此お草履でござりますか』『あい、藤倉の突掛(ツッカケ)だ』」

つっ‐かか・る【突掛】

〘自ラ五(四)〙 (「つきかかる(突掛)」の変化した語)
① 突いてかかる。ある物をめがけてつく。
※浄瑠璃・仮名手本忠臣蔵(1748)九「長押(なげし)に掛けたる鑓追取、突かからんず其気色」
② つきあたる。ぶつかる。
※滑稽本・七偏人(1857‐63)三中「あれあれ向うの屋代見世へ突掛りやアがった」
③ 争いをしかける。くってかかる。言いがかりをつける。
※滑稽本・浮世床(1813‐23)初「ゆふべも何所で飲でうせたかとろっぺきになって来て内中の者に突掛(ツッカカ)るだ」

つき‐かか・る【突掛】

〘自ラ五(四)〙
① 刃物などで突いて襲いかかる。また、目的物に向かって勢いはげしく進む。つっかかる。〔文明本節用集(室町中)〕
※蛾はどこにでもゐる(1926)〈横光利一〉三「蛾はまた彼を目がけて奇怪な速さで突きかかって来た」
② 攻撃的な態度になる。反抗する。くってかかる。言いがかりをつける。つっかかる。
※人情本・春色梅児誉美(1832‐33)後「いつも私が突(ツキ)かかり、愛相づかしの茶わん酒、色気も恋もさめはてる」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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