ちゃ‐や【茶屋】
〘名〙
① 製茶を販売する家。葉茶屋。
② 茶室の一種。掛け茶屋風に造った茶室。
※看聞御記‐応永三〇年(1423)七月一五日「夜光台寺茶接待密密見物、若宮、宰相以下相伴、座敷餝〈茶屋〉」
③ 路傍で湯茶などを供して人を休息させる商売。また、その店。
茶店。
※東寺百合文書‐を・応永一五年(1408)一一月二日・源次郎鎮守八幡宮宮仕職請文「一 宮仕部屋不レ可レ預二置一服一銭〈南大門前〉茶具足等一、并不レ可レ懸二茶屋煩等一事」
※虎明本狂言・薩摩守(室町末‐近世初)「茶を一ふくたべたひ、さだめてかうまいったらば、茶やのなひ事は有まひほどに」
※仮名草子・尤双紙(1632)上「あかき物のしなじな〈略〉茶屋のかかのまへだれ」
※浮世草子・好色一代男(1682)四「其跡は、あいの女とて、茶屋(チャヤ)にもあらず、けいせいにでもなし」
※洒落本・風俗八色談(1756)四「遊女をだまして穽(はま)らせ、茶屋(チャヤ)を語て揚代をうけ合せ」
⑦ 劇場に付属して、観客の案内や幕間の休憩・食事などの世話をする所。
芝居茶屋。
※談義本・根無草(1763‐69)前「芝居の内より茶屋の門々、それぞれのひいきの定紋付たる挑灯は星のごとく」
⑧ 大相撲の興行中、観客に
酒食を提供したり、また相撲協会から一部の座席の売りさばきをまかされている組織。
相撲茶屋のこと。
⑨ 客室があり、客の注文に応じて料理を食べさせる店。料理茶屋。
※黄表紙・高漫斉行脚日記(1776)上「なんと近日鶴が岡の茶屋で、一会もよほしたいもの」
⑩ 昔、茶色を多く染めたところから、染物屋のことをいう。後世には紺色を主として染めたので紺屋というようになった。
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茶屋【ちゃや】
茶を供応して休息させる茶店は中世末に出現したが,飲食物をあきなう煮売茶屋・料理茶屋に発展するのは江戸時代で,街道筋に出る掛茶屋,町中の盛場に出る水茶屋,貸席を営む待合茶屋・出合茶屋,遊客を妓楼に案内する引手茶屋,芝居茶屋,相撲茶屋等ができた。京坂では太夫(たゆう)を呼ぶ揚屋に対し,下級妓である天神を揚げて遊ぶ天神茶屋があった。水茶屋や料理茶屋には赤前垂をつけた給仕女・茶汲(ちゃくみ)女がいて,官禁にもかかわらず半ば公然の売春所であった。
→関連項目島原|新橋|曾根崎|奈良井|先斗町|待合
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ちゃ‐や【茶屋】
1 茶を製造・販売する職業。また、その家。葉茶屋。
2 旅人などに茶菓を供し休息させる店。茶店。「峠の茶屋」
3 江戸時代、上方の遊里で、客に芸者・遊女を呼んで遊ばせた家。揚屋より格が低かった。
4 江戸時代、江戸新吉原で、客を遊女屋などに案内することを業とした家。引手茶屋。
5 「芝居茶屋」に同じ。
6 「相撲茶屋」に同じ。
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茶屋
江戸時代の道沿いにあった庶民用の休憩場所です。「茶店[ちゃみせ]」とも言います。鯖山峠にもありました。
出典 ほうふWeb歴史館防府市歴史用語集について 情報
出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報
ちゃや【茶屋】
客に茶を出して休息させる茶店(ちやみせ)から発展した各種の飲食遊興店をいう。江戸時代,旅行者を対象として道中筋に出現した茶店は,途中の休息所であったから,当初は宿場を離れた山中などに開店したが,しだいに宿はずれ(棒鼻(ぼうはな))にまで進出して,これを立場(たてば)茶屋と呼んだ。宿駅保護のために,立場での食事や宿泊は禁じられたが,力餅などの名物とともに酒やさかな(肴)を提供するようになり,やがて給仕女を置いて客をひく店もできた。
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世界大百科事典内の茶屋の言及
【揚屋】より
…とくに大坂では揚屋制が発達し,揚屋の設備・待遇は全国一と称された。また,中級以下の遊女を招く家を茶屋と呼んで区別し,さらに私娼街でも送込み制をとってこれを呼屋といった。これに対し,江戸では発達せず,延宝(1673‐81)ころには大坂の35軒に江戸は14軒,宝暦10年(1760)ころには最後の1軒も消えた。…
【芝居茶屋】より
…江戸から明治・大正期まで劇場付近で観劇客に各種の便宜を供した施設。江戸期の芝居見物は早朝から夜までかかったうえ幕間も長く,劇場の設備も不十分で,より快適な観劇を望む客は多く茶屋を利用した。もっとも,上等席は茶屋が前もって押さえていたから,桟敷などで観劇するためには茶屋を通すほかなかった。…
【茶室】より
…〈茶室〉の呼称は近代になって普及した。室町時代には〈茶湯座敷〉〈数寄(すき)座敷〉〈茶屋〉などの語が見られたが,単に〈座敷〉と呼ばれることが多かった。また茶会記には座敷の広さだけが記されることもあった。…
【引手茶屋】より
…遊廓にあった茶屋の一種。引手茶屋がもっとも発達した江戸吉原では,高級遊女と遊興しようとする客は,まず引手茶屋にいった。…
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