立体規則性ポリマー(読み)リッタイキソクセイポリマー

化学辞典 第2版 「立体規則性ポリマー」の解説

立体規則性ポリマー
リッタイキソクセイポリマー
stereoregular polymer

ポリマーを構成している繰返し単位が,どのように立体的に規則正しく連続的に連結しているかを表したポリマーをいう.立体規則性ポリマーの繰返し単位は,その単位における立体配置も問題にするので,それを考慮しない場合の単なる構成繰返し単位とは異なる場合がある.たとえば,ポリプロピレンでは,単量体単位(一般には構成繰返し単位に対応するが,この場合は立体配置を問題にするので配置基本単位という)としては主鎖を含む面に対して互いに鏡像関係にある2種類が存在する.このうちの1種類のみが連結しているとみなせるポリマーはイソタクチックポリマーで,この場合の立体繰返し単位は配置基本単位と同一である.しかし,この2種類がまったく交互に連結したとみなせるポリマーはシンジオタクチックポリマーであり,この場合には,互いに鏡像関係にある2種類の配置基本単位を連結したのが立体繰返し単位となる.

構成繰返し単位中には,1個以上の立体異性の場所をもつ場合もあり,立体異性としては,上記の鏡像異性のほかシス-トランス異性,配座異性などがある.たとえば,trans-trans-ソルビン酸メチルH3COOC-CH=CH-CH=CH-CH3の立体規則性重合体では,配置基本単位中に二つのキラル炭素と一つの二重結合とが含まれている.このモノマーをキラルな触媒で重合して得たポリマーとしては,たとえば下記の構造が与えられており,(αS:δR)-trans-1,4-ポリ(ソルビン酸メチル)と命名される.一方,このポリマーの立体繰返し単位内におけるメチル基カルボキシル基の立体配置が,ちょうどエリトロの関係にあるので,エリトロ-ジイソ-1,4-trans-タクチックポリ(ソルビン酸メチル)と命名することもできる.このポリマーとは逆の旋光能をもっているポリマー(光活性ポリマー)も得られており,これは(αR:δS)に相当するものであろう.また,もし(αS:δS)あるいは(αR:δR)の配置をもつポリマーがあれば,このポリマーはトレオージイソ-trans-タクチックポリマーとよばれる.なお,重合体分子の構成繰返し単位中に複数個の立体異性の場所をもち,そのうち少なくとも一つの立体配置の規則性が明確な場合,このような重合体をタクチックポリマーとよぶ.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の立体規則性ポリマーの言及

【チーグラー触媒】より

… この発見はイタリアのG.ナッタによって発展させられ,それまで非常に重合しにくいとされていたプロピレンが,類似の触媒であるトリエチルアルミニウム‐三塩化チタン系(チーグラー=ナッタ触媒Ziegler‐Natta catalyst)によって容易に重合することがわかった。とくに,この重合反応で得られるポリプロピレンは立体的にきわめて規則正しい分子構造をもつことがわかり,そのようなポリマー(重合体)――立体規則性ポリマーという――を与える反応,すなわち立体特異性重合という,それまでになかった新分野がひらかれた。これらの業績によってチーグラーとナッタは1963年にノーベル化学賞を受けた。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」