シス‐トランス異性(読み)しすとらんすいせい(英語表記)cis-trans isomerism

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シス‐トランス異性」の意味・わかりやすい解説

シス‐トランス異性
しすとらんすいせい
cis-trans isomerism

化学構造の中に基準となる点(原子)、線(結合)あるいは面があり、その基準に対して同じ側あるいは隣り合う位置をシス、反対側になる位置をトランスとして区別することによって生ずる異性。たとえば、2-ブテンでは二重結合が基準になり、シクロプロパンジカルボン酸ではシクロプロパン環の面が基準になっている。ジアンミンジクロリド白金(Ⅱ)およびテトラアンミンジクロリドコバルト(Ⅲ)イオンではそれぞれの錯体の中心原子を見込んで塩素原子が隣り合うシス体と、反対側になるトランス体がある。これらはいずれも構造が固定化した場合の例であるが、自由回転の許される炭素‐炭素単結合を軸とした回転異性の例が1,2-ジアミノエタン(エチレンジアミン)の場合である。

 国際純正・応用化学連合(IUPAC:International Union of Pure and Applied Chemistry)では二重結合を挟んだ置換基の位置関係を示すEZ方式を定めており、これに従うと、cisZtransEとなる。ZEはそれぞれドイツ語のzusammen(一緒に)、entgegen(逆に)に基づく。

[岩本振武]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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