立体選択性(読み)りったいせんたくせい(その他表記)stereoselectivity

改訂新版 世界大百科事典 「立体選択性」の意味・わかりやすい解説

立体選択性 (りったいせんたくせい)
stereoselectivity

立体異性体をもつ反応物が立体異性体をもつ生成物を与える際,一つの立体異性体がより速い速度で他の立体異性体に優先して生成する現象を立体選択性,そのような過程を立体選択的過程という。すべての立体特異的反応は立体選択的であるが,その逆は必ずしも成立しない。たとえばトランス-2-フェニルシクロヘキシルトシレート(A)は立体選択的なパラトルエンスルホン酸の脱離により1-フェニルシクロヘキセン(B)を与える。ところがAのシス異性体Cも立体選択的にBを与えるから,この反応は立体特異的ではない。この場合AからBが生成する速度はCからBが生成する速度の104倍である。反応が完全には立体特異的に進行しないとき,反応を立体選択的ということがある。たとえば求核置換反応においてR体からS体とR体が4対1の比で生じるような場合,反応機構いかんにかかわらず反応は立体選択的である。


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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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