改訂新版 世界大百科事典 「笠塔婆」の意味・わかりやすい解説
笠塔婆 (かさとうば)
塔婆の一種で,角柱状または板状の塔身に屋根(笠)をのせたもの。塔身は石造の場合は自然石を多少加工したものもあり,六角柱などの多面体の塔身や特別に龕(がん)を設けたものは〈幢(どう)〉〈石幢(せきどう)〉として区別している。かつては《餓鬼草紙》などの絵巻にみられるような,角柱に仏龕をとりつけた木製の笠塔婆も多く製作されたと考えられるが,遺存例が少なく,現在では笠塔婆といえば石造物を指す場合が多い。塔身には仏像のほか,種子(しゆじ)や名号(みようごう),題目(だいもく)などを大書し,その下や側面に造立の願意や造立者,年号などを記録している。多くは亡者または自身の滅罪と浄土往生を祈願して造られているが,社寺の道標や下乗(げじよう)石にも用いられている。今日知られる最古の例は熊本市中央区坪井の本光寺の1175年(安元1)のもの。代表例としては奈良市般若寺の1261年(弘長1)の2基の塔婆があげられる。
執筆者:木下 密運
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報