題目(読み)ダイモク

デジタル大辞泉 「題目」の意味・読み・例文・類語

だい‐もく【題目】

書物や作品などの標題。
討議や研究などで、問題として取りあげる事柄。
日蓮宗で唱える「南無妙法蓮華経」の7字。
(多く「お題目」の形で)口先だけで、実質のともなわないこと。「お題目ばかり並べる」
[類語](1表題題名タイトル仮題原題題号標題外題げだい内題名題なだい・作品名・書名書目編目演題画題/(2話題トピック論題主題本題テーマ題材問題案件けん一件本件別件事案懸案課題論点争点プロブレム話頭話柄言いぐさ話の種語りぐさ

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精選版 日本国語大辞典 「題目」の意味・読み・例文・類語

だい‐もく【題目】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 書物や文学作品などの表題。外題(げだい)。題名。
    1. [初出の実例]「経には題目たり仏には眼たり 知んぬ汝は花の中に善根を植ゑたりといふことを〈源為憲〉」(出典:和漢朗詠集(1018頃)上)
    2. [その他の文献]〔白居易‐詠興五首序〕
  3. 物につける名前。名称。
    1. [初出の実例]「又是に持ちたるは桑の弓なり。〈略〉先づ先づ目出たき題目なり」(出典:車屋本謡曲・弓八幡(1423頃))
    2. [その他の文献]〔北史‐念賢伝〕
  4. あることを規定したり成立させたりする箇条や条件。
    1. [初出の実例]「院より御使に参てものを申されけるに、あまりに題目おほくかさなりければ」(出典:続古事談(1219)二)
  5. 物事の主題。
    1. [初出の実例]「けりゃう、名所きうせきのだいもくならば」(出典:風姿花伝(1400‐02頃)六)
    2. 「今少し我事を題目(ダイモク)にして。話をしたまはずや」(出典:内地雑居未来之夢(1886)〈坪内逍遙〉九)
  6. 特に取り上げるべきことがら。事件。
    1. [初出の実例]「近日〈略〉京都へ責上るべきよし風聞耳に満(みて)り。事実たらば、希代不思議の題目なり」(出典:明徳記(1392‐93頃か)上)
  7. 仏語。日蓮宗で、法華経の表題に「南無(なむ)」の二字を加えて唱える「南無妙法蓮華経」の称。
    1. [初出の実例]「かりそめにも題目をば念ぜずして、いかがなればあさましく念仏をば申しつるや」(出典:咄本・醒睡笑(1628)七)

題目の語誌

( について ) 唱題は古くから比叡山で行なわれていたが、口誦念仏の形での唱題は、天台大師智顗(ちぎ)が「法華玄義」において「妙法蓮華経」の経題に解釈を加えたが、その思想を受け継ぎ、発展させた日蓮にはじまる。日蓮は智顗の一切を五字・七字の題目に集約して教学を樹立した。→題目踊り題目講

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「題目」の意味・わかりやすい解説

題目
だいもく

仏教で、経の題号をいう。日蓮(にちれん)は「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」の7字を口唱すること(唱題)が末代鈍根の者にふさわしい『法華経(ほけきょう)』の修行であると説き、日蓮系ではその7字または「妙法蓮華経」の5字を題目と称する。それ以前の天台宗は『摩訶止観(まかしかん)』10巻に説いてある十境十乗(じっきょうじゅうじょう)の観法(かんぽう)、四種三昧(ししゅざんまい)を『法華経』修行として勧めていたが、これは法然(ほうねん)(源空)によれば難行道であった。また比叡山(ひえいざん)では朝講法華・夕念仏を勧めてはいた(源信)が、唱題に理論的根拠を与え、いっさいの『法華経』修行を唱題の一行にまとめた人は日蓮である。「妙法蓮華経」の5字は単に『法華経』の名ではなく、『法華経』の真理そのもの(一念三千(いちねんさんぜん))であり、また教主釈尊(しゃくそん)(釈迦(しゃか))が積み重ねてきた功徳(くどく)(因行果徳)を包む法であるから、これに帰依(きえ)(南無)すれば現世には安心(あんじん)を得て、死後は霊山(りょうぜん)浄土に生まれることができるという。しかし口唱だけでは不完全で、身にも読まねばならぬことを強調し、これを色読(しきどく)という。なお、日蓮が1266年(文永3)に著した『法華題目抄』は『法華経』の題目について詳述されたものである。

 また、題目に本尊、戒壇をあわせて三大秘法と称する。

[浅井円道]

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改訂新版 世界大百科事典 「題目」の意味・わかりやすい解説

題目 (だいもく)

一般的には書物などの標題や題号を意味するが,日蓮系では,〈妙法蓮華経〉の5字や〈南無妙法蓮華経〉の7字を題目,お題目と称し,これを唱えること,すなわち唱題を信行の中心に据える。日蓮は,〈妙法蓮華経〉という題目は単なる題号ではなく,釈尊の説いた法華経の功徳が凝集していて,これを受持し唱えれば,釈尊のもつすべての功徳が譲り与えられるとして,これを本門の題目と称し,本門の本尊,本門の戒壇とともにその教義の中心に据えた。日蓮宗で,曼荼羅の中央に題目を書いたものを本尊とするが,筆端を四方に延ばして書き,俗に〈ひげ題目〉と称する。題目はたとえいっぺんでも唱題すれば救われるといい,唱題の事例はすでに平安時代中期にみられるが,その意味づけを明確にしたのは日蓮であった。これに基づき,唱題が個人的にも集団的にも日蓮系法華仏教信奉者の宗教生活の中心となっていき,やがて題目講も営まれていった。
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百科事典マイペディア 「題目」の意味・わかりやすい解説

題目【だいもく】

仏教経典の題号。大乗経典の題号は,それを聞き,唱え,念ずるとき,多大の功徳があるとされ,特に重視された。天台宗の法華経重視は後に日蓮に受け継がれ,法華経の題号である妙法蓮華経や南無妙法蓮華経を五字または七字の題目と呼んで,これを唱えること(唱題(しょうだい))が強調され,成仏への直道とされた。
→関連項目題目踊

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普及版 字通 「題目」の読み・字形・画数・意味

【題目】だいもく

品評。題識。標目。試門。また、詩文の題。宋・楊万里〔紅錦帯花〕詩 後園初夏、題目無し 小樹、也(ま)た詩を得たり

字通「題」の項目を見る

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「題目」の解説

題目
だいもく

一般には経典の標題をさすが,日蓮は「法華経」の経題である「妙法蓮華経」に,帰依信順を意味する「南無」を冠して「南無妙法蓮華経」を五字七字の題目と称した。この題目を唱えることを唱題という。日蓮宗では,題目の実践を通して仏教の易行(いぎょう)化・庶民化をはかった。浄土宗・浄土真宗の称名(しょうみょう)念仏に相当する。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「題目」の意味・わかりやすい解説

題目
だいもく

『法華経』をたたえる南無妙法蓮華経の7文字をいう。特に日蓮宗では,題目を称えれば功徳が集ることが強調されている。

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旺文社日本史事典 三訂版 「題目」の解説

題目
だいもく

日蓮宗(法華宗)の根本義で,「南無妙法蓮華経」の7字をいう
この題目を唱えることによって末法の世を救済し,仏の救いにあずかることができると日蓮は説いた。

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