( ⑥について ) 唱題は古くから比叡山で行なわれていたが、口誦念仏の形での唱題は、天台大師智顗(ちぎ)が「法華玄義」において「妙法蓮華経」の経題に解釈を加えたが、その思想を受け継ぎ、発展させた日蓮にはじまる。日蓮は智顗の一切を五字・七字の題目に集約して教学を樹立した。→題目踊り・題目講
仏教で、経の題号をいう。日蓮(にちれん)は「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」の7字を口唱すること(唱題)が末代鈍根の者にふさわしい『法華経(ほけきょう)』の修行であると説き、日蓮系ではその7字または「妙法蓮華経」の5字を題目と称する。それ以前の天台宗は『摩訶止観(まかしかん)』10巻に説いてある十境十乗(じっきょうじゅうじょう)の観法(かんぽう)、四種三昧(ししゅざんまい)を『法華経』修行として勧めていたが、これは法然(ほうねん)(源空)によれば難行道であった。また比叡山(ひえいざん)では朝講法華・夕念仏を勧めてはいた(源信)が、唱題に理論的根拠を与え、いっさいの『法華経』修行を唱題の一行にまとめた人は日蓮である。「妙法蓮華経」の5字は単に『法華経』の名ではなく、『法華経』の真理そのもの(一念三千(いちねんさんぜん))であり、また教主釈尊(しゃくそん)(釈迦(しゃか))が積み重ねてきた功徳(くどく)(因行果徳)を包む法であるから、これに帰依(きえ)(南無)すれば現世には安心(あんじん)を得て、死後は霊山(りょうぜん)浄土に生まれることができるという。しかし口唱だけでは不完全で、身にも読まねばならぬことを強調し、これを色読(しきどく)という。なお、日蓮が1266年(文永3)に著した『法華題目抄』は『法華経』の題目について詳述されたものである。
また、題目に本尊、戒壇をあわせて三大秘法と称する。
[浅井円道]
一般的には書物などの標題や題号を意味するが,日蓮系では,〈妙法蓮華経〉の5字や〈南無妙法蓮華経〉の7字を題目,お題目と称し,これを唱えること,すなわち唱題を信行の中心に据える。日蓮は,〈妙法蓮華経〉という題目は単なる題号ではなく,釈尊の説いた法華経の功徳が凝集していて,これを受持し唱えれば,釈尊のもつすべての功徳が譲り与えられるとして,これを本門の題目と称し,本門の本尊,本門の戒壇とともにその教義の中心に据えた。日蓮宗で,曼荼羅の中央に題目を書いたものを本尊とするが,筆端を四方に延ばして書き,俗に〈ひげ題目〉と称する。題目はたとえいっぺんでも唱題すれば救われるといい,唱題の事例はすでに平安時代中期にみられるが,その意味づけを明確にしたのは日蓮であった。これに基づき,唱題が個人的にも集団的にも日蓮系法華仏教信奉者の宗教生活の中心となっていき,やがて題目講も営まれていった。
執筆者:高木 豊
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一般には経典の標題をさすが,日蓮は「法華経」の経題である「妙法蓮華経」に,帰依信順を意味する「南無」を冠して「南無妙法蓮華経」を五字七字の題目と称した。この題目を唱えることを唱題という。日蓮宗では,題目の実践を通して仏教の易行(いぎょう)化・庶民化をはかった。浄土宗・浄土真宗の称名(しょうみょう)念仏に相当する。
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