算法新書(読み)さんぽうしんしょ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「算法新書」の意味・わかりやすい解説

算法新書
さんぽうしんしょ

幕末から明治にかけてよく読まれた数学書。長谷川寛(はせがわひろし)の経営する数学道場の出版(1830)で、著者は、一関(いちのせき)の千葉雄七胤秀(たねひで)編、長谷川寛閲とあるが、実際の著者は長谷川寛であるという。本書は、当時の数学の集大成で、1巻と2巻はそろばんで計算できる算法、第3巻から第5巻までは、代数、無限級数、整数論積分、極形術など、高等数学について説明されている。当時の最高の算法がほとんど含まれ、しかも上手に解説されているので、読者に歓迎された。

[下平和夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の算法新書の言及

【長谷川寛】より

…これが2代長谷川善左衛門弘(1810‐87)である。塾から出版された数学書の中で,《算法新書》(千葉胤秀編,1830),《大全塵劫記》(山本賀前編,1832),《算法地方大成》(秋田義一編,1837)はとくに有名で,なかでも《算法新書》は初歩から専門の分野に至る数学の集大成で,明治中期まで何回も改版され広く読まれた。長谷川寛は図形の変形について新しい方法を見つけ,これを変形術,極形術と名付け,《算法変形指南》(福田廷臣編,1820),《算法極形指南》(秋田義一編,1836)として公刊した。…

【和算】より

…長谷川の塾を長谷川数学道場といい,千葉胤秀,山本賀前,秋田義一らの数学者が輩出した。出版した数学書も,《算法新書》(1830),《大全塵劫記(たいぜんじんこうき)》(1832),《算法地方大成》(1837)など,いずれもベストセラーになっている。長谷川の業績中,変形法,極形法という方法は,ある図形を変形してもそこに成り立つ性質が不変である関係を利用して,複雑な図形の性質を単純化して関係式を導く方法で,《算法変形指南》(1820),《算法極形指南》(1836)にまとめられている。…

※「算法新書」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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