糖原病VIII型

内科学 第10版 「糖原病VIII型」の解説

糖原病VIII型(糖原病(グリコーゲン病))

(8)糖原病Ⅷ型
病因
 ホスホリラーゼキナーゼの遺伝的欠損により,グリコーゲン分解障害をきたす.ホスホリラーゼキナーゼは,異なる遺伝子にコードされる多くのサブユニットにより構成される.これらのサブユニットをコードする遺伝子のうち少なくとも4種類の遺伝子(PHKA1,PHKA2,PHKB,PHKG2)に変異が同定されている.
病態生理
  ホスホリラーゼキナーゼは,α,β,γ,δの4種類のサブユニットよりなる.複雑なサブユニット構造と組織特異的遺伝子発現のため,ホスホリラーゼキナーゼ欠損症には,罹患臓器や遺伝形式の異なる臨床病型が存在する.
臨床症状:
1)X染色体劣性肝型ホスホリラーゼキナーゼ欠損症
(XLG): 最も頻度が高くⅧ型の約70%以上を占める.臨床症状は,Ⅵ型とほぼ同様で症状からは区別できない.乳幼児期から肝腫大,脂質異常症,低身長などを認める.低血糖は軽度または存在しない.これは,グリコーゲン分解は障害されるが糖新生は正常であるためである.軽度の肝障害を認める例が多いが思春期には正常化する.最近,X染色体劣性肝型ホスホリラーゼキナーゼ欠損症はPHKA2遺伝子の変異によることが明らかにされた.PHKA1遺伝子変異をもつ患者も1例報告されている.
2)常染色体劣性肝筋型
: 乳児期の肝腫大,低身長,筋緊張低下を呈するが,症例によっては,筋症状を欠く症例(肝型)も存在する.βサブユニットをコードするPHKB遺伝子変異により肝筋型,肝型のいずれも生じることが示されている.PHKG2遺伝子変異による症例も報告がある.
検査成績
 肝トランスアミナーゼ,コレステロールトリグリセリドの軽度上昇.
診断・鑑別診断
 Ⅰ,Ⅲ,Ⅵ型など,ほかの肝型糖原病との鑑別が問題となる.Ⅰ型は遺伝子診断が比較的容易なのでこれにより否定する.Ⅲ,Ⅵ型と異なり,グルカゴン負荷試験で血糖の上昇がみられることで区別する.しかしながら,負荷試験のみでは病型が確定できない例も多く,罹患臓器を用いた酵素診断が必要となる.遺伝子診断は,現時点では困難である.
治療・予後
 多くの例では特別の治療を要せず,予後良好である.肝型糖原病で低血糖を示す場合には頻回の食事や高炭水化物食などを指導する.[松原洋一]
■文献
Kishnani PS, Koeberl D, et al: Glycogen storage diseases. In: The Online Metabolic and molecular Bases of Inherited Disease, (Valle D, Beaudet AL, et al eds). http://www.ommbid.com/OMMBID/the_online_metabolic_and_molecular_bases_of_inherited_disease/b/abstract/part7/ch71

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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