糖新生(読み)トウシンセイ(英語表記)gluconeogenesis

デジタル大辞泉 「糖新生」の意味・読み・例文・類語

とう‐しんせい〔タウ‐〕【糖新生】

動物脂質アミノ酸など糖質以外の物質からグルコースを合成する代謝経路肝臓腎臓で行われる。解糖系クエン酸回路とほぼ逆の反応で、ピルビン酸乳酸、クエン酸回路の中間体などからグルコースが作られる。糖新生系

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「糖新生」の意味・わかりやすい解説

糖新生
とうしんせい
gluconeogenesis

動物で行われる糖骨格の新生をさす用語で、この過程はヒトにおいても重要な代謝経路である。糖新生は嫌気的解糖の結果遊離した乳酸からグルコースを再生する過程であり、神経組織や赤血球はグルコース以外のエネルギー源を利用しがたく、グルコースへの依存度が高い。したがって、食物からの糖の供給量が低下すると、アミノ酸から出発して糖骨格を新生しなければならない。

 糖新生の過程の多くは解糖系の逆行と理解できるが、三つの異なった段階がある。まずピルビン酸からホスホエノールピルビン酸への転換は、オキサロ酢酸を経なければならない。またフルクトース-1,6-ジリン酸からフルクトース六リン酸への変化、そしてグルコース六リン酸からグルコースへの変化はいずれも特異的なフォスファターゼによって触媒される。この三つの過程では、いずれの場合にも、解糖系を逆行する場合に比較すると過剰ATPアデノシン三リン酸)のエネルギーを失うようになっている。すなわち、この過剰に投資されたATPのエネルギーによって、代謝系はグルコースの新生の方向に動かされるのである。また、この三つの段階は糖新生の速度が調節される段階ともなっている。すなわち、コルチゾールなどはこれらの酵素を促進し、インスリンは抑制する。

村松 喬]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

栄養・生化学辞典 「糖新生」の解説

糖新生

 アミノ酸,グリセロールなどの糖でない物質から糖を作ること.血糖が低下した場合などに起こる.肝臓の機能の一つ.グルココルチコイドによって促進され,インスリンによって抑制される.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の糖新生の言及

【代謝】より

…(3)五炭糖回路 核酸の前駆体であるヌクレオチド生合成の素材であるリボース‐5‐リン酸の供給やNADPHの生成のために重要な代謝で,主として細胞質で営まれる。(4)糖新生 乳酸,グリセロール,アミノ酸などの炭水化物以外の物質からピルビン酸の生成→炭酸固定によるオキサロ酢酸の合成→リン酸化と脱炭酸反応によるホスホエノールピルビン酸の生成を経てグルコースを合成する代謝で,おもに肝臓や腎臓で営まれる。(5)グリコーゲンの合成と分解 合成はUTPとグルコース‐1‐リン酸からUDPグルコースを経てグリコーゲン合成酵素が,また分解はホスホリラーゼが触媒する。…

※「糖新生」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android