改訂新版 世界大百科事典 「系統選抜」の意味・わかりやすい解説
系統選抜 (けいとうせんばつ)
line selection
動植物の品種改良(育種)の基本的な操作の一つ。作物では1個体からたくさんの種子が採種できることが多い。そのため,1個体の子を次の世代にたくさん作ることができる。このように1個体の子を群としてまとめて育成することを系統育成という。1系統から数個体を選び,個体ごとに次の世代に系統育成をするが,この兄弟系統を一つの系統群として扱う。系統群間および系統間の選抜を広い意味で系統選抜といっている。個体選抜や集団選抜と対応するものである。自殖性作物の系統育種法を例にとると,系統選抜は雑種第3代F3(雌雄のかけ合せから3代目)から始まる。F3ではかなりきつい選抜をしており(100系統から2~3系統を選抜することもある),専門家としての経験もかなり要求される。次のF4世代からは系統群育成が始まるが,選抜にあたってはまず系統群どうしを比較して良いものを選び,次に,選んだそれぞれの系統群の中の数系統を相互に比較する。遺伝質の分離があると思われる系統を捨てたりして,残りの系統を翌年の育種育成用の材料とするが,その中からさらにとくに1系統を選ぶ。この選ばれた系統から数個体を個体選抜し,次代の系統育成に用いるのが標準のやり方である。
執筆者:武田 元吉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報