改訂新版 世界大百科事典 「集団選抜」の意味・わかりやすい解説
集団選抜 (しゅうだんせんばつ)
mass selection
作物・家畜の品種改良(育種)で実施している選抜方法の一つで,個体選抜や系統選抜と違い,集団として選抜個体群を維持していく方法をいう。もともと交雑育種法とは異なる分離育種法で行われてきた選抜操作の一つで,他殖性動植物のために考案されたものであるが,現在は種々の育種の場面に応用されている。まず原品種を集団栽培して個体間で自然交雑をさせる。その中から優良個体をいくつか選び,それらの種子を混ぜて次世代を養成する。3世代ぐらい優良個体の選抜を繰り返すと原品種の特性はかなり改良される。このように集団選抜法は個体を複数選抜し,集団としての遺伝的組成を変えていく方法である。育種の歴史の浅い作物に適用すると有効で,日本では牧草の育種などによく使われている。この集団選抜法には系統集団選抜法,成群集団選抜法,家系選抜法などがある。家系選抜法は家畜で利用される方法で,子孫の数が限定されているときに用いられる。優良な家系をつくり,その家系内で交雑を繰り返しながら不良個体を除いて家系を維持していく方法である。なお交雑育種法の一つである集団育種法でも,交雑初期の世代に上述の方法に準じた集団選抜を加えて,育種の効率化を図っている。
執筆者:武田 元吉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報