日本大百科全書(ニッポニカ) 「紙塑人形」の意味・わかりやすい解説
紙塑人形
しそにんぎょう
昭和初期に創製した日本人形。粘土のかわりに、紙を生麩糊(しょうふのり)で練ってつくったボディー、あるいは粘土製のものの上に和紙を貼(は)り彩色して仕上げる。粘土や桐塑(とうそ)と違い、柔らかな紙の感触がよく生かされているのが特色である。湿気、乾燥にも強い。1930年(昭和5)歌人で人形作家の鹿児島寿蔵(じゅぞう)が、和紙原料のコウゾなどを用いて創案した。純粋のコウゾ生漉(きずき)紙を染色し、小さくちぎって幾度も貼り重ね、磨き出す製作法で、その作品を芸術品の地位にまで高めた。それが端緒となり、一般化し流行するようになった。この技法の元祖は、奈良朝時代に「摂(せつ)、捻(ねん)」と記録されているのがそれで、当時の彫塑の基本として使用された。6、7世紀ごろ中国から伝来し、紙の苆(すさ)、海藻のふのり、粘土、雲母(うんも)とでつくられたらしい。法隆寺五重塔中の小像類にそれが残っている。
[斎藤良輔]