紫苑物語(読み)シオンモノガタリ

デジタル大辞泉 「紫苑物語」の意味・読み・例文・類語

しおんものがたり〔シヲンものがたり〕【紫苑物語】

石川淳中編小説。昭和31年(1956)、雑誌中央公論」7月号に掲載弓矢に熱中した主人公が、やがて産み出した魔の矢によって滅びていくさまを描く。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「紫苑物語」の意味・わかりやすい解説

紫苑物語
しおんものがたり

石川淳(じゅん)の短編小説。1956年(昭和31)『中央公論』に発表、同年講談社刊。歌の家に生まれた守(かみ)は、歌から出て弓の道をみいだす。彼の弓は「知の矢」から「殺の矢」へと開眼し、さらに「魔の矢」へと上昇する。守の前に、彼にとってのいま一人の自己、これを乗り越えるべき自己として、平太という存在が現れる。守は平太と対決し、この乗り越さるべき自己を射ることによって、自らも死ぬ。守の冀願(きがん)はこの運命的な自己実現において、山野にとどろく鬼の歌のあかしを残す。この作者秀作の一つ。

[井沢義雄]

『『紫苑物語』(新潮文庫)』

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