日本大百科全書(ニッポニカ) 「統治能力」の意味・わかりやすい解説
統治能力
とうちのうりょく
英語の「ガバナビリティ」governabilityの訳であるが、正確には政治システムの統治可能性という意味であって、為政者が統治をする能力のことではなく、国民がどれだけ円滑に統治されうるかが問題なのである。わが国において自由民主党内で三木内閣の統治能力の欠如について「ガバナビリティ」の語が使われたことから、一般にも流行したが、この用法は誤りであった。また、1975年(昭和50)10月京都で開かれた日米欧委員会の総会で「民主主義国の統治能力」が討論の主題とされたことで注目された。問題の中心は、先進民主主義国において参加デモクラシーの試みが進行すると同時に、政府自体が対処すべき問題がますます増加し、新しい問題の解決のためには、政府の伝統的な問題処理方法やそのための手続が役にたたず、国民の不満をかえって増大させ、政府の権威が低下し、民主主義による政治運営が困難になってきた点である。
[川野秀之]