改訂新版 世界大百科事典 「継続的債権関係」の意味・わかりやすい解説
継続的債権関係 (けいぞくてきさいけんかんけい)
一般的には,債権関係は,売買代金の一括支払のように,債務者の1回きりの給付によって,その目的を達して消滅する。しかし,AがBにその所有建物を1ヵ月5万円の家賃(賃料)で貸すような場合には,BのAに対する賃料支払に関する債務関係(Aのがわからいえば債権関係)は,かなり長期間にわたって存続する。つまり,BはAに1ヵ月5万円を支払わねばならないという基本的な債務が存在するとともに,毎月5万円を決められた日に支払うべきであるという個別具体的な債務が生じるにいたる。このような状況にあるAB間の関係を継続的債権(債務)関係という。かかる関係は,主として継続的契約(賃貸借・雇傭・請負など)から生じる。継続的債権関係では,個別具体的な債務について遅滞を生じただけでは,基本的な債務そのものについて遅滞を生じるものではない点で,一般的な一時的債権関係とは趣を異にする。したがって,Bが1ヵ月分の賃料の支払を遅らせたとしても,Aはこれを理由に賃貸借契約を解除することはできない。継続的債権関係の当事者間には,一時的債権関係の当事者間におけるよりも,強い信頼関係が形成されているのであるから,Bが数ヵ月分の賃料を引き続いて支払わない場合に,はじめてこの信頼関係が破られ,債務不履行(遅滞)を理由とする解約が認められる。
→解約
執筆者:石田 喜久夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報