日本大百科全書(ニッポニカ) 「羅汝芳」の意味・わかりやすい解説
羅汝芳
らじょほう
(1515―1588)
中国、明(みん)末の陽明学者。字(あざな)は惟徳(いとく)、号は近溪(きんけい)。江西南城の人。泰州学派顔鈞(がんきん)(1504―1596)に従い王艮(おうごん)の学に連なった。彼は、孟子(もうし)の「赤子の心」に良知をみいだし、それは万人に平等に賦与されており、不学不慮のうちに発現する、とした。同じく王学左派に属す王畿(おうき)が口舌より文筆に優れたと評されたのに対し、彼は舌、筆に勝ると評されるように、簡明直截(ちょくせつ)な学説を持し旺盛(おうせい)な講学活動による教化にその特徴があった。彼によって陽明学は広い地域に喧伝(けんでん)され、また士大夫層にとどまらず広範な階層にまで浸透していくことになった。著には『羅近溪先生全集』『近溪子集』、弟子たちの編纂(へんさん)にかかる数種の語録がある。
[杉山寛行 2016年2月17日]