老人性疣贅(読み)ろうじんせいゆうぜい(しろうせいかくかしょう)(その他表記)Verruca senilis (Seborrheic keratosis)

六訂版 家庭医学大全科 「老人性疣贅」の解説

老人性疣贅(脂漏性角化症)
ろうじんせいゆうぜい(しろうせいかくかしょう)
Verruca senilis (Seborrheic keratosis)
(皮膚の病気)

どんな病気か

 中年以降に発生し、加齢とともに増える皮膚の良性腫瘍で、皮膚の老化現象のひとつとされています。

原因は何か

 遺伝的要因や日光による露出部の皮膚の老化が、誘因と考えられるものがあります。

症状の現れ方

 手のひら、足の裏以外の皮膚であれば、全身どこにでも発生します。とくに顔面頭部、前胸部、背部によくみられます。色は褐色調ですが、健康な皮膚に近い色調のものから黒色調のものまでさまざまな濃さのものがあります。大きさは数㎜から2~3㎝くらいで、わずかに盛り上がるものから突出したしこりになるものまであります(図75)。

 表面はざらざらしていることが多く、汚れた毛穴のような黒点が多数みられることもあります。

検査と診断

 通常は見た目やダーモスコピー検査(皮膚内の色素分布を詳細に観察できる特殊な拡大鏡を用いた検査)で診断できます。他の疾患、とくに悪性腫瘍などの可能性を捨てきれない場合には、組織を一部採取または全部切除して検査します。

治療の方法

 あまり外見を気にしない高齢者に多いことや良性腫瘍であることから、この病気の多くは治療の対象になりません。診断が不確かなもの、炎症を起こしたり、頭部でくしに引っかかるなどして日常生活上不便を来すもの、顔面などで見た目に問題のあるものなどが治療の対象になります。現在では、高齢者であっても、とくに見た目の理由から治療を希望する人が多くなっています。

 治療法としては、手術凍結療法レーザー治療、電気外科的治療などがあります。診断が不確かな場合には、手術または生検(組織を一部切り取って調べること)をして病理検査を行う必要があります。

 見た目やダーモスコピー検査で診断が確実な場合には、手術以外の治療でも十分です。とくに液体窒素(ちっそ)を用いて病変を凍らせてしまう凍結療法は、他の治療法と違って麻酔を必要とせず、簡便なためによく行われます。凍結後は、1~2週で自然にとれます。

病気に気づいたらどうする

 皮膚科専門医を受診して診断を確認したうえで、治療を受けるか、放置するか決めてください。

田村 敦志


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「老人性疣贅」の解説

ろうじんせいゆうぜいしろうせいかくかしょう【老人性疣贅(脂漏性角化症) Verruca Senilis】

[どんな病気か]
 中年以降に、顔、躯幹(くかん)(胴体(どうたい))などにみられる直径1cmほどの黒褐色の腫瘍(しゅよう)です。周囲との境界ははっきりしており、形状は扁平(へんぺい)またはドーム状に隆起しています。表皮の老化による変化とも考えられているため、老人性のいぼ(疣贅(ゆうぜい))といわれています。
[治療]
 小さいものは、液体窒素(えきたいちっそ)を含ませた綿球を腫瘍にあてる凍結療法を行ないます。10日前後で腫瘍は、かさぶた状になって取れてしまいます。やや大きいものでは、同じ治療を2~3回くり返す必要があります。さらに大きな腫瘍なら、局所麻酔をして外科的に切除します。切除した腫瘍組織を病理検査して確定診断します。
[日常生活の注意]
 老人性疣贅は良性腫瘍ですが、黒色の皮膚腫瘍は基底細胞(きていさいぼう)がんや悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ)などの悪性腫瘍である場合もあります。そのため、皮膚のいぼ状の変化に気づいたときは、専門医の診察を受けることをお勧めします。

出典 小学館家庭医学館について 情報

世界大百科事典(旧版)内の老人性疣贅の言及

【しみ】より

…強い紫外線を避けることも大切である。 なお,いわゆる〈しみ〉と呼ばれるものには以上のほか,老化現象としての色素沈着と老人性疣贅(ゆうぜい)がある。前者は顔面など比較的露出部に多い。…

※「老人性疣贅」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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