聴器毒(読み)ちょうきどく(その他表記)ototoxicity

改訂新版 世界大百科事典 「聴器毒」の意味・わかりやすい解説

聴器毒 (ちょうきどく)
ototoxicity

ある種の化学物質が生体に作用して内耳障害を起こさせ,難聴耳鳴り,耳閉塞感などの蝸牛症状とめまいなどの前庭症状があらわれる場合をいう。薬剤の種類により内耳の障害される部位が異なるが,一般に蝸牛のらせん器の感覚細胞の主として外有毛細胞および前庭感覚器の感覚上皮のⅠ型細胞が侵されやすい。蝸牛では通常下部回転ほど,また前庭では半規管膨大部稜が最も障害を受けやすい。聴力像でみると8000Hzから順次低音部へと聴力低下は進行する。代表的な聴器毒性薬剤としては,アミノ配糖体系抗生物質ではストレプトマイシンカナマイシンネオマイシンゲンタマイシン,ペプチド系抗生物質ではカプレオマイシン,ポリミキシンB,抗腫瘍剤ではシスプラチン,利尿剤ではエタクリン酸,フロセマイド,その他ではサリチル酸製剤(アスピリン),ヒビテン,ポリブレンなどがある。聴器毒性薬剤を直接に内耳内に投与した場合はもちろん,全身投与のほか,中耳腔内に投与しても薬剤は蝸牛窓,前庭窓を通過し,内耳に到達し,内耳障害は発現する。

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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の聴器毒の言及

【耳】より

…また利尿剤,例えばフロセミドなどは血管条に変化を起こし難聴を起こすが,その作用は一時的である。これらの化学物質を聴器毒という。 蝸牛,球形囊は内耳のなかでも系統発生学的に新しいが,これらが選択的におかされる疾患がある。…

※「聴器毒」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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