デジタル大辞泉 「蝸牛」の意味・読み・例文・類語
か‐ぎゅう〔クワギウ〕【×蝸牛】
2 内耳の一部で、カタツムリの殻状をした聴覚にたずさわる器官。基底膜などによって三つに仕切られ、人間で2回転半ほど巻き、中は内リンパで満たされている。底部は内耳道に面し、伝わってきた音を受ける神経の終末が分布する。渦巻き管。蝸牛殻。
[補説]狂言の曲名別項。→蝸牛
側頭骨岩様部内にあり、内耳の一部を構成し、聴覚受容器を入れる骨性構造物。渦巻管(うずまきかん)、かたつむり管ともいう。全形がカタツムリの殻に似る円錐(えんすい)形状で、頂点(蝸牛頂)は前方に向き、底(蝸牛底)は後方を向く。高さ約4ミリメートル、底の径は約8ミリメートル。内部には中心の軸(蝸牛軸)の周りを後方から前上方に向かって2回と4分の3回転のラセン管が巻いている。その長さは約3センチメートルである。この蝸牛ラセン管内部は、蝸牛軸から出て軸を螺旋(らせん)状に巻いている骨ラセン板によって不完全に上下に分けられている。上側を前庭階(ぜんていかい)、下側を鼓室階(こしつかい)という。骨ラセン板の外側縁は蝸牛ラセン管の外壁に到達せず、その間に膜性の蝸牛管が挟まっている。蝸牛管は蝸牛ラセン管の外側縁を蝸牛の頂上まで巻き上がり、頂盲端となっている。蝸牛管の下壁の基底膜上に音波の受容器(コルチ器)がある。蝸牛軸の内部を通ってきた蝸牛神経(内耳神経の一部)がこれに分布している。蝸牛管内には内リンパ液が満たされている。
[嶋井和世]
狂言の曲名。山伏狂言。太郎冠者(かじゃ)は、主人から長寿の薬にカタツムリ(蝸牛)をとってこいと命じられる。ところがカタツムリを知らないので、藪(やぶ)の中にいて頭が黒く腰に貝をつけ、ときには角(つの)を出すと教わって出かける。藪の中で頭に黒い兜巾(ときん)を着けて寝ていた山伏(シテ)を太郎冠者はカタツムリかと思って尋ねる。山伏はあきれるが、からかってやろうと、腰の法螺(ほら)貝を見せたり、篠懸(すずかけ)を角のように差し上げたりして信じさせてしまう。山伏は囃子物(はやしもの)にのって行こうと、太郎冠者に囃させ、「でんでんむしむし」と音頭をとり戯れている。そこへ迎えにきた主人は驚いて、あれは山伏だと教えるが、太郎冠者は囃子物のリズムについ体が動き出してしまう。やがて主人までも引き込まれ、ともに浮かれながら入っていく。以上は大蔵流の筋で、和泉(いずみ)流では、正気づいた太郎冠者と主人を山伏が打ち倒して逃げていく。カタツムリと山伏の連想の奇抜さと、囃子物にのせられるおもしろさが眼目。
[林 和利]
狂言の曲名。山伏狂言。出羽の羽黒山から出た山伏が,大和の葛城(かつらぎ)山で修行を積んでの帰り道,竹やぶの中でひと寝入りしている。そこへ,主命で,長寿の薬になるというかたつむりを求めにきた太郎冠者(かじや)が出くわす。太郎冠者は,かたつむりがどんなものか知らないまま,黒い兜巾(ときん)をいただいた山伏をかたつむりと思い,声をかける。山伏は太郎冠者をからかってやろうと,ほら貝を見せたり角を出すまねをして見せるので,太郎冠者は山伏をかたつむりだと信じこみ,主人のもとへ連れて行こうとする。山伏は囃し物の拍子に乗らねば行かれないといい,冠者は教えられたかたつむりの囃し物を謡い,山伏とうち興じているところへ,主人が冠者を探しに来る。結末は主人も誘いこまれて3人で囃し物に浮かれて退場するのと,われに帰った冠者と主人が山伏を追い込むのと両様の台本・演出がある。登場人物は山伏,主人,太郎冠者の3人で,山伏がシテ。童心の世界を笑いに導入した,理屈抜きの佳作。
執筆者:羽田 昶
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…外耳は哺乳類で発達するが,鳥類にも一部みられる。内耳のうちで聴覚に関係するのは球形囊で,鳥類では球形囊が長くのび,哺乳類ではさらに蝸牛(かぎゆう)管に発達する。これに伴い有毛細胞の数も多くなっている。…
…内耳を包んでいる組織をも含めて,この複雑な構造を迷路という。聴覚に関係する部分は蝸牛(かぎゆう)と呼び,名前のように2回転半巻いている全長約30mmの管である。平衡覚にあずかるのは,直進運動を感ずる耳石器(前庭にあり,垂直,水平の二つの方向に位置している)と,回転感を感ずる三つの半規管(三半規管)の二つに分かれる。…
…内耳は刺激を受容する中心的部分で,最も奥深く位置し,進化的にみて最も由来が古く,すべての脊椎動物が例外なく備えるものである。内耳の実質をなすのは〈迷路〉と呼ばれる複雑な囊状の構造で,これは動物のグループによってかなり異なるが,一般的には〈卵形囊〉とそれに付属した半円形の管である〈半規管〉,および〈球形囊〉とそれから伸びた〈蝸牛(かぎゆう)管〉という4部の中空の小囊から成る(ただし下等脊椎動物は蝸牛管をもたない)。卵形囊と球形囊は内耳の中心部をなし,これらをあわせて〈前庭〉という。…
…カタツムリのツムリはツブ(壺),すなわち殻が膨らんだ巻貝の意であるが,カタの意は明らかでない。デンデンムシともいうが,これは〈出よ出よ虫〉の意で早く殻から体をのび出してはえということである。学術的な用語はマイマイである。…
※「蝸牛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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