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みみear

翻訳|ear

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説


みみ
ear

脊椎動物の頭部にあり,聴覚と平衡感覚を司る器官。脊椎動物の耳は,動物の体の形や習慣の多様性からみると,驚くほど共通点がある。どの脊椎動物にもみられるのが内耳で,耳の中で進化的に最も古い部分である。魚類の無顎類から両生類爬虫類鳥類哺乳類へと進化していく過程で,耳の構造はより複雑になり,多くの音の振動数を聞き分けられるようになった。
魚類の基本的な聴覚構造は,水の流れと速度を感受する側線から進化した。構造的には卵形嚢と球形嚢からなる前庭と,半規管という中空の小嚢からなり,中には液体が詰まっていて,相互に連結している。これらがいわゆる内耳で,球形嚢にはラジナと呼ばれる平衡斑があり,平衡感覚を維持する役割をしている。ラジナは両生類,爬虫類にもみられる。両生類の耳は,基本的に魚類と似ているが,変態により陸に上がるようになったカエルなどでは内耳の外側に空気の詰まったもうひとつの孔(中耳)が発達した。中耳は体表面に鼓膜をもち,小さな骨(耳小柱)で内耳とつながっている。爬虫類では内耳と中耳があり,内耳のある構造部分が長く伸び,蝸牛(かぎゅう)の始まりとなっている。鼓膜は頭部に陥没しているのが特徴である。爬虫類でもヘビには中耳と開口部がない。しかし耳小柱は残っているため,空気を伝わる音はあまりよく聞こえないものの,地面を伝わる振動にはとても敏感である。鳥類の耳は基本的には爬虫類のそれと同じだが,蝸牛はより長く,感受性が高い。高音域の識別に優れており,ヒトよりはるかに高い音まで聞き分ける。
ヒトを含めた哺乳類の耳は,大きく三つの部分に分かれる。(1) 外耳 耳介と呼ばれる軟骨質の大きな突出部と外耳道からなる。耳介は音波を集める集音器の役割をもつが,水中生活に適応したクジラ類とアザラシにはなく,また穴に住む哺乳類にもないか,あってもごく小さい。外耳道は集めた音を中耳に導く役割をもつ。(2) 中耳 外耳と鼓膜で隔てられた鼓室と,連続した三つの骨(ツチ骨,キヌタ骨,アブミ骨)の耳小骨からなる。耳小骨が三つあるのは哺乳類の大きな特徴である。中耳は耳管によって咽頭腔と通じており,空気で満たされている。(3) 内耳 迷路とも呼ばれる。側頭骨の錐体部の複雑な孔 (骨迷路) と,リンパ液が詰まった管と嚢(半規管,前庭,蝸牛)の繊細なシステムからなる。哺乳類が音を聞くシステムは以下の通りである。まず音波が耳介によって集められ,外耳道へ伝えられる。外耳道の奥にある鼓膜の振動が,耳小骨によって増幅されて鼓室を通り,前庭の外壁にある前庭窓という膜に伝わる。さらに増幅された振動は前庭窓を通して内耳のリンパ液へ到達する。リンパ液に達した振動は螺旋状の蝸牛のなかで,ラセン器(コルチ器)の有毛細胞に捕捉され電気化学信号に変わり,脳へ伝わる。内耳は聴覚とは別に,平衡感覚の器官としても働く。体が加速したり,回転したりすると半規管内のリンパ液が慣性によるずれを生じ,それが平衡毛を刺激して変化を感知する。体の回転が止まったあとも眩暈を感じるのは,平衡毛の刺激が続いているためである。また前庭にある二つの嚢の有毛細胞は重力のような静圧を感じとり,頭部の位置を認識することができる。
耳の障害としては,聴力の減退する難聴が一般に知られる。障害の起こる場所によって種類が異なり,外耳と中耳の障害は伝音性難聴,内耳と神経の障害は感音性難聴と呼ばれる。その他,両方の障害による混合性難聴がある。内耳の感音性難聴には進行性難聴があり,最も多い原因は耳硬化症である。これは内耳をふさぐ骨の病気で,前庭窓のアブミ骨の下部が固定されるため,音の振動を内耳へ伝えられなくなる。黄色人種より白色人種に多い。原因は不明であるが,手術で治る場合が多い。神経性の病気で一般的なものは,先天性神経性難聴である。原因は蝸牛の聴覚神経の欠陥で,たいてい出生後まもなく発見される。この病気による聴力障害はかなり重く,現在のところ治療法はない。また,加齢のために内耳の聴覚神経が徐々に衰えることを,老人性難聴という。
厳密にいえば,耳というのは脊椎動物の器官である。無脊椎動物には発生・構造的に脊椎動物とは異なる,耳に代わる聴覚器官や平衡器官がある。たとえば,多くの節足動物は,音をはじめとするエネルギーを感じる触毛をもっている。またゴキブリやコオロギの中には腹部の後端にある尾葉で音の振動数を感じるものがいる。直翅類(コオロギなど),同翅類(セミなど),鱗翅類(ガなど)の昆虫では,胸部や腹部,前肢に鼓膜に似た器官がみられる。音波があたるとこの膜の張り具合が変化し,非常に特殊化された神経構造である弦音器官がこれを感知する。一般に,音を出す(鳴く)動物は自分の出す音と同じ周波数を可聴域としている。

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デジタル大辞泉の解説

じ【耳】[漢字項目]

[音](漢) ニ(呉) [訓]みみ のみ
学習漢字]1年
〈ジ〉
みみ。「耳朶(じだ)耳鼻科外耳心耳俗耳内耳・馬耳」
耳で聞くこと。「耳順
〈みみ〉「耳元空耳早耳福耳

みみ【耳】

頭部の左右にあり、聴覚および平衡感覚をつかさどる器官。哺乳類では耳介(じかい)耳殻(じかく))が張り出し、鳥類とともに外耳中耳内耳の3部分からなる。爬虫(はちゅう)類・両生類では中耳・内耳があり、鼓膜が露出。魚類では内耳だけで、平衡器としての働きが大きい。「まで真っ赤になる」
聞く能力。聴力。また、聞くこと。聞こえること。「がいい」「に快い音楽」
耳のように器物の両側についている部分。取っ手。「鍋の」「水差しの
紙や食パンなどのふち・へり。織物で、横糸が折り返す部分。「パンの」「紙のをそろえる」
針の糸を通す穴。めど。「針の
本製本の書籍で、背の両側のやや隆起した部分。
兜(かぶと)の吹き返しの異称。
大判・小判のふち。転じて、その枚数。
「千両の小判―がかけてもならぬ」〈浄・傾城酒呑童子〉
[下接語]兎(うさぎ)耳聞き耳小耳笊(ざる)耳地獄耳空(そら)耳垂れ耳遠耳寝耳初耳早耳僻(ひが)耳福耳袋耳

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百科事典マイペディアの解説

耳【みみ】

頭部にある平衡聴覚器。外耳,中耳内耳の3部からなるが,内耳が主要部で他は補助的。頭部外側面に隆起する耳介と内方に続く外耳道を合わせて外耳という。外耳道の奥にある鼓膜より内方で側頭骨に囲まれる部分を中耳といい,鼓室が主体で耳管によって咽頭(いんとう)腔に通じる。
→関連項目鼓室耳管人工内耳

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世界大百科事典 第2版の解説

みみ【耳 ear】

脊椎動物の頭部にある有対の感覚器官で,平衡覚と聴覚をつかさどる。ふつう〈耳の形〉などというときには,哺乳類の頭の両側に突出した耳介を指すが,解剖学的にいえば耳には内耳,中耳,外耳の3部分が含まれる。内耳は刺激を受容する中心的部分で,最も奥深く位置し,進化的にみて最も由来が古く,すべての脊椎動物が例外なく備えるものである。内耳の実質をなすのは〈迷路〉と呼ばれる複雑な囊状の構造で,これは動物のグループによってかなり異なるが,一般的には〈卵形囊〉とそれに付属した半円形の管である〈半規管〉,および〈球形囊〉とそれから伸びた〈蝸牛(かぎゆう)管〉という4部の中空の小囊から成る(ただし下等脊椎動物は蝸牛管をもたない)。

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大辞林 第三版の解説

みみ【耳】

脊椎動物の頭部にあって聴覚と平衡覚をつかさどる器官。左右一対あり、哺乳類と一部の鳥類では外耳・中耳・内耳の三部から成る。また、外耳のうち外から見える耳殻や外耳道をさす場合がある。魚類は内耳のみ、両生類・爬虫類は内耳と中耳をもつ。
音を聞いたり聞きわけたり情報を集めたりする力。聴力。 「 -が遠い」 「 -が早い」 「地獄-」
織物・紙・食パンなどの端の方の部分。 「パンの-」 「織物の-」
耳に似た形のもの。特に器物の取っ手。 「なべの-」
本の部分の名。本製本で、表紙の平と背の境目のやや隆起した部分。 → 製本
のれん・わらじ・針などのひもを通すための輪。乳
江戸時代、兜かぶとの吹き返しの俗称。
大判・小判のへり。転じて、その枚数。 「千両の小判、-が欠けてもならぬ/浄瑠璃・傾城酒吞童子」

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説


みみ

普通は、脊椎(せきつい)動物の頭部にある聴覚器官と平衡覚器官との総称で、内耳(ないじ)、中耳(ちゅうじ)、外耳(がいじ)が含まれる。一方、音の受容器を一般的に耳とよぶことがあり、これには昆虫類の鼓膜(こまく)器官のようなものも含まれる。
 脊椎動物の内耳は元来、魚類や水生両生類の側線器または感丘とよばれる水流や水の振動に反応する機械的刺激受容器が、体内に沈み込んでできたものと考えられている。内耳は「迷路」ともいわれるように複雑に入り組んだ袋状の器官の集まりで、その基本的要素は、前庭の卵形嚢(のう)と球形嚢、および半規管である。球形嚢にはつぼとよばれる部分があり、爬虫(はちゅう)類、鳥類、そして哺乳(ほにゅう)類において音の受容器として発達する。とくに哺乳類では長く伸びて渦巻をつくり蝸牛管(かぎゅうかん)となっている。これらの器官は聴側線系または側線迷路系と総称され、有毛細胞がその共通の受容器である。1個の有毛細胞には数十本の感覚毛がある。その一端にある1本の毛には、微小管が集まってできた繊毛軸糸の構造が認められる。繊毛軸糸は、運動性細胞小器官である繊毛に特徴的なもので、この感覚毛が繊毛起源であることを示唆する。この軸糸をもった感覚毛を動毛、もたないものを不動毛とよぶ。不動毛は繊毛とは異なる微絨毛(びじゅうもう)であり、その内部には規則正しく並んだアクチン繊維がある。側線器や半規管の有毛細胞にある感覚毛は、クプラとよばれるゼラチン様物質でできた薄膜に埋まっている。クプラが水流を受けて傾くと、そのゆがみが有毛細胞に受容器電位を生じさせる。有毛細胞の不動毛は、1本の動毛から離れるにしたがってしだいに短くなるように規則正しく並んでいる。クプラが動毛の側に倒れると有毛細胞は脱分極し、反対側に倒れると過分極する。有毛細胞にきている求心性(感覚性)神経は、つねにほぼ一定の頻度で自発性インパルスを出しているが、有毛細胞が脱分極すれば自発性インパルスの頻度は増加し、過分極すれば減少する。また有毛細胞には、遠心性神経による抑制性の支配が知られている。
 脊椎動物の内耳の球形嚢と卵形嚢においては、感覚毛の上に、炭酸カルシウムの結晶が集まった平衡石がのっており、それに加えられる力により、重力の方向や直線運動の加速度を受容する。半規管は卵形嚢から出て半円を描き、また卵形嚢に戻る管状の器官で、管内部の液(内リンパ)の流動とそれによるクプラの傾きにより回転運動を受容する。脊椎動物のなかでも原始的な円口類では、卵形嚢と球形嚢が分離せず半規管が1個しかないものや、卵形嚢、球形嚢は分かれるが半規管が2個であるものがある。それ以外の脊椎動物では3個の半規管がそれぞれ直交する面内にあり、空間内のどのような面内における回転も受容できるようになっている。コイ、ナマズなど、ある種の硬骨魚類では、前から3個の椎骨の突起からできた骨片がうきぶくろと球形嚢を連絡している。このウェーバー器官とよばれる装置によって、水中音によるうきぶくろの圧変動は球形嚢に伝えられる。
 陸上動物では、空気の振動である音波を内耳球形嚢の内リンパ液の振動として伝えるために、特別の力学的装置を必要とする。両生類以上の脊椎動物では第1鰓弓(さいきゅう)より発生した鼓室と鼓膜、鼓室小骨による中耳が発達する。耳小骨は、両生類から鳥類までは柱状の耳小柱1個であるが、哺乳類では3個となる。哺乳類で発達する蝸牛は、ワニ類や鳥類では基本的には直線的に伸びた管で、渦巻はつくっていない。これは音波を受容する器官で、管の長軸に沿って連なるコルチ器には3列と1列に並ぶ有毛細胞があり、その上を蓋膜(がいまく)が覆っている。哺乳類の成体の有毛細胞には動毛がない。蝸牛は音の周波数または高低を識別する器官で、蝸牛管が長いと周波数の識別能力も高くなる。哺乳類一般についていえば、小さな動物ほど高い周波数を受容する。ヒトの可聴範囲(20~2万ヘルツ)に比べて、ネコ(5万ヘルツ)やコウモリ(10万ヘルツ)は高い周波数の上限をもっている。一方、ゾウではヒトの可聴範囲の下限に近い低音がもっともよく聞こえる音であるといわれている。クジラは例外で、15万ヘルツ以上の高い音を聞くことができる。コウモリやクジラは、高い周波数の音を発し、その反響を聞いて物体の位置や方向を知る反響定位を行う。
 昆虫類には、鼓膜器官とよばれる音の受容器がある。その場所は前肢の脛節(けいせつ)(コオロギ)、第2腹節(セミ)、後胸(ドクガ)など、種によってまちまちである。可聴範囲は高い周波数にずれており、ガは天敵であるコウモリの発する超音波によく反応する。一般に鼓膜器官は音波の周波数を分析する機構はもっていないが、音の強弱や音源の方向を探知する能力は優れている。
 なお、俗称では哺乳類の外耳の耳介(じかい)(耳殻)やそれに似たものを耳という。この場合には、聴覚や平衡覚の受容器としての機能には関係なく外形の類似のみによる呼称である。プラナリアの頭部の突起や、ミミイカの胴から出ているひれを耳というのはこの例である。[村上 彰]

ヒトにおける耳

聴覚と平衡感覚(平衡覚)をつかさどっている感覚器をいい、内部に聴覚受容器と平衡覚器を備えている。聴覚器は外耳、中耳、内耳の3主部から構成される。外耳は耳介と外耳道からなるが、俗に耳とよぶ場合には、耳介だけをさすこともある。[嶋井和世]
耳介
耳介の形状と大きさには個人差が著しいが、これは耳介の基礎となっている耳介軟骨によって形状と大きさが決まるためである(耳介軟骨は弾性軟骨)。耳介の下方につながっている耳垂(じすい)(ミミタブ)にはまったく軟骨がなく、おもに脂肪組織からなる。耳介内部の三角窩(か)には多量の汗腺(かんせん)と脂腺があり、耳珠(じしゅ)(外耳孔の前縁で後方に向かって突出した部分)の皮膚には比較的粗剛で短い耳毛(じもう)が生えるが、これは対珠(たいしゅ)(外耳孔の後ろ下方で耳珠に対して隆起した部分)にも及ぶ。耳介の外耳孔から鼓膜までの管状の部分が外耳道である。[嶋井和世]
外耳道
外耳道は約25ミリメートルの長さをもつが、内側の3分の2は骨性外耳道、外側の3分の1は軟骨性外耳道で、全体としてみると、その走行は緩いS状彎曲(わんきょく)を示している。すなわち、水平面から見ると外側部は前方に凸で、内側部は後方に凸となり、垂直面(額面)から見ると、外側部は下方に凸で、内側部は上方に凸となる。骨性外耳道には皮下組織がほとんどなく、骨壁がすぐ皮下にきているうえ、骨膜が皮膚と固着しているため、耳かきなどが触れると痛みを感じやすい。なお、乳児では骨性外耳道はまだほとんどできていないが、5、6歳になると軟骨性外耳道と骨性外耳道の長さはほぼ等しくなる。外耳道には耳介側頭神経(三叉(さんさ)神経の枝)と迷走神経の枝が分布しているため、舌や歯(ここにも同じく三叉神経が分布している)を刺激したとき、耳に痛みを感じることもある。また、外耳道を刺激すると、迷走神経の反射によってくしゃみが出たりすることもある。外耳道の最奥には鼓膜があり、鼓膜はその奥にある中耳と外耳道との境となっている。[嶋井和世]
鼓膜と中耳
鼓膜は、耳介を後方に引っ張ると外耳道がまっすぐになるため、外耳口から観察することができる。鼓膜は前上方から後下方へと斜めに長くついているが、新生児ではやや丸く、また、ほぼ垂直になっている。このため、新生児では耳介を下に引っ張ることによって鼓膜を見ることができる。鼓膜の外側面には、三叉神経の枝が分布しているので痛覚は鋭敏となる。鼓膜の奥の小さな部屋が中耳である。
 中耳はおもに鼓室からなり、これに咽頭腔(いんとうくう)と連絡する耳管と副洞(乳突洞・乳突蜂巣(ほうそう))が付属している。鼓室の全形は両凹レンズ形を呈し、鼓膜とほぼ同様の傾斜をしている。鼓室の壁は六壁に区分されるが、鼓膜は外側壁にあたる。鼓室の後上方壁からは乳突洞口を経て乳突洞、さらにこれから乳突蜂巣に連なる孔(こう)があり、前下方壁からは耳管鼓室口を経て耳管に連なる孔がある。耳管は耳管咽頭口を経て咽頭に開口するため、鼓室の内腔には空気が存在し、耳管が開いていれば鼓室は大気圧と同じとなる。
 鼓室内腔には、三つの耳小骨が関節で連結して連鎖をつくり、これには筋および靭帯(じんたい)が付属している。耳小骨の連鎖は鼓膜と内耳の前庭窓との間にわたっており、鼓膜側からツチ骨(槌骨)、キヌタ骨(砧骨)、アブミ骨(鐙骨)の順につながっている。ツチ骨柄(へい)の部分が鼓膜に付着し、アブミ骨底の部分が前庭窓にはまり込んでいる。鼓膜の振動は三つの耳小骨を伝わり前庭窓に達するが、前庭窓の広さは鼓膜の広さの約20分の1とされるため、鼓膜への刺激は前庭窓にはほぼ20倍に拡大されて伝わることとなる。[嶋井和世]
内耳
内耳は中耳からさらに奥深い側頭骨岩様(がんよう)部の内部にあって、骨迷路(こつめいろ)とその内部を占める膜迷路からなる。骨迷路は前庭(前庭器官)、骨半規管(骨三半規管)、蝸牛(かぎゅう)(蝸牛殻(かく))に区別され、膜迷路は骨迷路と同じ形の膜性の閉鎖管である。膜迷路の中には内リンパ液(内リンパ)が流れており、外側の骨迷路との間には外リンパ組織があって外リンパ液(外リンパ)が充満している。つまり外リンパ液が膜迷路を囲んでいることになる。
 骨迷路の前庭内には膜迷路の球形嚢と卵形嚢があり、いずれも位置覚器の働きをもっている。また、骨迷路の半規管内にある膜性三半規管(外側・前・後半規管)とその膨大部は、回転加速度の運動覚器としての働きをもっている。そして、これらのそれぞれが平衡感覚をつかさどる。蝸牛はその内部に蝸牛ラセン管をもち、同形の膜性の蝸牛管(全長約30ミリメートル)が通っている。蝸牛管の中のコルチ器(ラセン器)は聴覚器としての働きをもっている。[嶋井和世]

民俗

耳の穴、聴力、耳たぶなどに関して、それぞれ民間伝承を伴う。耳の穴は、鼻の穴とともに霊の出入口と考えられており、睡眠中に蜂(はち)などが出入りする類(たぐい)のモチーフをもつ昔話は、それを示しているとみることができる。聞く機能に関しては、盆の初めに地面に耳を当てると、地獄の物音が聞こえるとか、同齢者が死ぬと耳鐘(みみがね)といって、耳鳴りのような予兆現象があるという。同齢者が死んだということを聞くと、すぐ耳塞(みみふさ)ぎをして、聞かなかったことにする呪法(じゅほう)がある。5月5日などには耳くじりといって、「よいこと聞くように、悪いこと聞かないように」と唱える行事もある。耳たぶに関しては、大きなものを福耳というが、生まれつき耳たぶに小穴のある人について、母親が妊娠中に機(はた)を織ったためだなどの伝承がある。人間の耳ではないが、放牧の牛に耳印(みみじるし)といって種々の切り込みを入れ、飼い主のしるしにすることがある。[井之口章次]

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世界大百科事典内のの言及

【顔】より

…ほおと上唇との境には左右あわせて八字形の鼻唇溝があり,また下唇とおとがい(頤)との間には一字形または弓形の頤唇溝(いしんこう)がある。(4)耳は頭,顔,くびの3部の相合する点にある貝殻状の皮膚のひだである。正しい解剖学名は〈耳介〉(介は貝の意)で,一部は軟骨を芯にしている。…

【針】より

…中世に多く製作された職人歌合絵(うたあわせえ)の類には,針磨(はりすり)と呼ばれる針づくり職人の姿が見られるが,多くは舞鑽(まいきり)を用いてめど穴をあけているところを描いており,この作業が針づくりの工程の中で重要であったことを示している。針の穴については,早く平安時代の《宇津保物語》にも,〈いと使ひよき手作りの針の耳いと明らかなる〉と,耳(穴)が使いよさにつながることが語られており,後の《慶長見聞集》にも,小さな針に穴をあけることへの驚きが記されている。 中世には京都の姉小路針が有名で,《庭訓往来》にもその名が見える。…

※「耳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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