耳鳴り(読み)ミミナリ(その他表記)Tinnitus

デジタル大辞泉 「耳鳴り」の意味・読み・例文・類語

みみ‐なり【耳鳴り】

実際には音がしていないのに、耳の奥で何かが鳴るように感じられること。頭部外傷・耳の病気・高血圧などの際に現れる。耳鳴じめい

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六訂版 家庭医学大全科 「耳鳴り」の解説

耳鳴り(耳鳴)
みみなり(じめい)
Tinnitus
(耳の病気)

耳鳴りとは

 耳鳴りとは、外で音がしていないのに音が聞こえる状態ですが、現実には音がない自覚的耳鳴(じかくてきじめい)と、患者さんの体の耳付近や耳管などで実際に何らかの音がしていて、それが聴こえている他覚的耳鳴(たかくてきじめい)に分けられます。

 現実的には自覚的耳鳴が大多数なので、まず自覚的耳鳴から話を進めます。

自覚的耳鳴

 自覚的耳鳴(以下、単に耳鳴り)が起こる仕組みははっきりしていませんが、内耳から脳に至る聴覚経路のどこかで、外からの音入力に関係なく聞こえの神経が活性化されることで生じると推測されます。また耳鳴りは、外界が静かになる夜や早朝に大きく感じることが一般的です。

 耳鳴りは、さまざまな病気に伴って起こります。代表的なものは内耳性難聴(ないじせいなんちょう)に伴うもので、突発性難聴音響外傷メニエール病などでみられます。しかし、単に加齢に伴って生じたり、あるいは難聴など他の症状をまったく伴わず、耳鳴りが単独で生じることもあります。

 耳鳴りは主観的なものなので、その性質や強さを正確に測るのは難しいのですが、耳鳴検査の器械を用いていろいろな高さ、強さの音を発生させ、それと聞き比べることで、ある程度数値として評価することができます。

自覚的耳鳴の治療

 原因となる病気がはっきりしている時には、その病気を治療することが耳鳴りの治療になります。しかし、多くの耳鳴りは原因不明で、いろいろな治療が試みられます。

 よく用いられるのは、内耳や脳の血液循環を改善する薬、筋肉の緊張を和らげる薬、精神安定薬などの薬物療法です。そのほか、局所麻酔薬静脈注射鼓室(こしつ)への副腎皮質ステロイド薬の注入などの有効性が報告されています。

 耳鳴りの背景に精神的緊張やストレスが存在することも多いので、心理的なアプローチも重要です。外から現実の音が入ってくると、相対的に耳鳴りが認知しにくくなること(マスキング効果)を利用して、好きな音楽やラジオなどを楽しむことで耳鳴りを緩和することができます。マスカーといって、補聴器のような器具で持続的に雑音など耳鳴りをマスクするような音を出す機器もあります。また、高度難聴に伴う耳鳴りがある方で人工内耳埋め込み手術を受けた患者さんのうち、約80%において、人工内耳使用中に耳鳴りが軽減するとされています。

他覚的耳鳴

 次に、他覚的耳鳴について述べます。他覚的耳鳴がある場合、実際に患者さんの耳と医師の耳を聴診器で使うようなチューブでつないでみると、ほとんどの場合、患者さんが聞いている耳鳴りを医師が聞くことができます。他覚的耳鳴には、間欠的なものと持続的なものがあります。

 間欠的なものには、コツコツとかプツプツなどと表現できる音が多く、耳管周辺の筋肉や耳小骨(じしょうこつ)についている筋肉のけいれんによるものがあります。また、物を飲み込んだ時などに、鼻の奥の上咽頭(じょういんとう)で耳管の開口部の隆起が周囲の粘膜に触れてピチャピチャ音をたてるのが聞こえて気になることもあります。

 音が持続的な場合では、耳周辺の大きな静脈や動脈内を血液が流れる時に生じる雑音が聞こえる例があります。

他覚的耳鳴の治療

 治療は、それぞれの原因に応じて考えます。たとえば筋肉のけいれんなら、筋肉の緊張をとるような薬物を試みたり、耳小骨についている筋肉の腱を切断することもあります。しかし、この奇妙な耳鳴りの原因が明らかになるだけでも不安が解消され、そのまま経過をみてゆく方法もあります。

耳鳴りとの平和共存

 耳鳴りそのものは、生命の危険を伴うものでも痛みを生じるものでもありません。しかし、覚醒(かくせい)している間中、休みなく続くことで常に脅かされるような感覚を伴い、患者さんの苦痛は決して小さくありません。できる範囲で原因を追及して治療法を探り、また、周囲の人々が耳鳴りの患者さんの苦痛を理解し、共感を示すことが患者さんにとっては大きな救いになります。

 また、たとえ最終的に耳鳴りが完全に治らなくても、時間がたつにつれて次第に「耳鳴りはしているが、あまり気にならない」というように、耳鳴りと「平和共存」できるようになるのが一般的です。消極的と思われるかもしれませんが、耳鳴りのように難治性の症状に対しては、時間をかけてこのような受容的考え方にたどり着くのもひとつの解決法なのです。

内藤 泰

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家庭医学館 「耳鳴り」の解説

みみなり【耳鳴り】

 その人のまわりでは、音源となるものがないのに、耳の中で音を感じる聴覚現象を、耳鳴(みみな)り(耳鳴(じめい) Tinnitus)と呼びます。
 耳鳴りは、ほとんどの人が経験するもので、無響室(むきょうしつ)や静かな部屋に入ると感じることもあります。また、貧血の前兆として耳鳴りを感じることや、アスピリンを服用すると耳鳴りを感じることがあります。
 一時的な耳鳴りは、健康な人でもよく感じますが、持続する場合や、だんだんひどくなる場合は、重大な病気がかくれていることもありますので、注意しなければなりません。ただし、耳鳴りのほとんどは、はっきりとした原因がまだわかっていません。
 日常生活にさしさわるような病的な耳鳴りを感じるときは、耳鼻科(じびか)を受診しましょう。
◎耳鳴りの分類
 大きく分けると、本人しか感じない自覚的耳鳴(じかくてきじめい)と、他人にも聞こえる他覚的耳鳴(たかくてきじめい)があります。
■自覚的耳鳴(じかくてきじめい)
 耳鳴りの多くは、自覚的耳鳴です。この自覚的耳鳴は、一種の聴覚異常感で、難聴(なんちょう)(「難聴」)にともなっておこることが多くあります。感音難聴(かんおんなんちょう)にともなっておこる耳鳴りでは、高音の「キーン」「ピー」などの音やセミの鳴き声のような音が聞こえることが多いといわれます。一方、伝音難聴(でんおんなんちょう)にともなう場合は、低音の「シャー」「ザー」といった音が聞こえることが多いようです。
 このほかに、難聴をともなわないものもあり、無難聴性耳鳴(むなんちょうせいじめい)と呼ばれます。
■他覚的耳鳴(たかくてきじめい)
 他覚的耳鳴は、耳鳴りのある側の耳にゴム管を入れると、ほかの人にも聞きとれます。音の原因は、耳のまわりの筋肉が収縮する際の雑音が「カチカチ」「コツコツ」と聞こえるものや、血管内の血流による雑音が聞こえるものがあります。
◎原因となるおもな病気
 一般的に、高音の耳鳴りは内耳性(ないじせい)や中枢性(ちゅうすうせい)の病気によるものが多く、低音の耳鳴りは中耳(ちゅうじ)の病気によるものが多いとされています。
①外耳の病気
 耳垢栓塞(じこうせんそく)(「耳垢栓塞」)、外耳道異物(がいじどういぶつ)(「外耳道異物」)
②中耳の病気
 急性化膿性中耳炎(きゅうせいかのうせいちゅうじえん)(「急性化膿性中耳炎」)、慢性化膿性中耳炎(まんせいかのうせいちゅうじえん)(「鼓膜穿孔(慢性化膿性中耳炎/単純性中耳炎)」)、上鼓室炎(じょうこしつえん)、耳硬化症(じこうかしょう)(「耳硬化症」)
③内耳の病気
 内耳炎(ないじえん)(「内耳炎/ウイルスによる内耳障害」)、メニエール病(「メニエール病」)、突発性難聴(とっぱつせいなんちょう)(「突発性難聴」)、老人性難聴(ろうじんせいなんちょう)(「老人性難聴」)、騒音性難聴(そうおんせいなんちょう)(「騒音性難聴/音響外傷」)、薬剤性難聴(やくざいせいなんちょう)(「薬剤性難聴」)など
④その他の病気
 聴神経腫瘍(ちょうしんけいしゅよう)(「聴神経腫瘍」)、くも膜炎、髄膜疾患(ずいまくしっかん)、脳腫瘍(のうしゅよう)(「脳腫瘍とは」)、動脈硬化(「動脈硬化症」)、高血圧(「高血圧(症)」)、低血圧(「低血圧(症)」)、血液疾患、糖尿病(「糖尿病」)、単純性甲状腺腫(たんじゅんせいこうじょうせんしゅ)(「単純性甲状腺腫」)、更年期障害(こうねんきしょうがい)(「更年期障害」)、貧血(「貧血とは」)、代謝障害など
◎耳鳴りの治療とは
 耳鳴りの治療法として、確かなものはまだありません。原因となる病気がある場合は、そのもとの病気を治療します。
 対症療法として、耳鳴りのもっとも多い原因となる疲労や睡眠不足、ストレスに対しては、ビタミン剤精神安定剤抗不安薬の服用を行ないます。
 そのほか、精神療法バイオフィードバック)なども行なわれています。また、耳鳴遮蔽器(じめいしゃへいき)を使って、耳鳴りと同じ周波数の音を聞かせて一時的に耳鳴りを抑える方法も行なわれるようになっています。

みみなり【耳鳴り】

 耳鳴りは、周囲に音がないのに音が聞こえる症状をいいます。一般的には「ピー」「シー」「ジー」といった音が聞こえます。
 どちらかの耳で聞こえる人や、頭の中で聞こえる人がいます。
 耳鳴りの始まりは、難聴が急に進行するときのことが多く、難聴の進行が止まると、数年の間に徐々に軽くなる傾向があります。
 老人性難聴では、難聴が進行するときに耳鳴りが始まったり、大きくなったりし、その後ゆっくり消えていくのですが、また難聴が進行するので、新しく耳鳴りがおこったりします。
 たいへん少ないのですが、耳鳴りが、脳腫瘍(のうしゅよう)などの、治療が必要な病気の症状のことがあります。
 耳鳴りがおこったり、急に大きくなったりしたときは、耳鼻咽喉科(じびいんこうか)の診察を受けておくと安心です。CT、MRIなどの検査で、脳腫瘍がないことを確認します。
 75歳をすぎたお年寄りの20%以上の人に、耳鳴りがあると推定されます。いろいろな病気や生活歴が耳鳴りの原因となって、それが続いているのです。
 耳鳴りは、気にすると大きくなり、慣れてくると、ほとんど気にならなくなります。高齢者の耳鳴りは、少ないものではなく、また、心配するようなものは少ないのです。
 急に耳鳴りがおこったときには、耳鼻咽喉科で診察を受け、治療が必要な病気がないか確認しましょう。原因となる病気がないときは、できるだけ慣れるようにするとよいでしょう。

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改訂新版 世界大百科事典 「耳鳴り」の意味・わかりやすい解説

耳鳴り (みみなり)
tinnitus

耳鳴(じめい)とも呼ばれ,外界に音源がないのに聴覚が生じる現象である。耳鳴りの多くは,本人にしか聞こえず,自覚的耳鳴と呼ばれるが,このほかに他人でも聞こえる耳鳴りがあり,他覚的耳鳴と呼ばれる。後者は,動脈瘤,動静脈奇形,血管腫瘍などの血管の異常が中耳や耳の近くにできていて拍動音が聞こえる場合や,耳管を開閉する筋肉や中耳の耳小骨についている小さな筋肉の痙攣(けいれん)性の動きにより起こる場合があるが,いずれもきわめてまれな病気である。

 耳鳴りのほとんどは,前者の自覚的耳鳴であり,耳の病気により難聴が生じたときに同時に起こることが多い。とくに日常生活にあまり関係のない範囲に入る周波数の音,すなわち500Hzより低い音や3000Hzより高い音の聞こえが悪くなったときには,難聴は自覚できず,耳鳴りだけが自覚されることがあり,この場合,耳鳴りの音の性状は,難聴のある周波数の音に似ている場合が多い。つまり,低い音の聞こえが悪いときにはザーとかグーンという形容で表現される低い音の耳鳴りが,高い音の聞こえが悪いときにはキーンとかピーという形容で表現される高い音の耳鳴りの生じることが多い。中耳炎のような鼓膜や耳小骨の障害による難聴(伝音性難聴)の場合,低い音の聞こえが悪くなることが多いので低い音の耳鳴りとなり,内耳の障害による難聴は,一般には高い音の聞こえがより悪くなることが多いので高い音の耳鳴りとなる。つまり耳鳴りは,耳の働きが異常に亢進して生じるのではなく,働きが落ちたために起きてくるのである。また,耳の病気のために内耳が完全に破壊されたり,内耳から脳へ向かう神経(聴神経)を切断しても耳鳴りは消失しないことが知られている。耳鳴りは耳の病気の症状として生じることが多いが,聴力異常のない人でも完全に外界の音が聞こえないように造られた無響室に入ると,なんらかの音が聞こえることが多く,これを無響室性耳鳴と呼ぶ。すなわち,きわめて静かな環境で聞こえる耳鳴りは異常とはいえない。むしろ通常の環境では外界のさまざまな音のために耳鳴りが聞こえず,耳の病気のために聞こえが悪くなると外界の音が聞こえなくなるために耳鳴りがしてくるとも考えられる。

 耳鳴りの強さは,耳鳴りのしている耳に雑音を聴かせて,耳鳴りの聞こえなくなる雑音の強さを測定したり,耳鳴りのないほうの耳に耳鳴りに類似した音を聞かせて大きさを比較する方法により測定することができる。これらの方法によると,耳鳴りの9割は10dB以内の強さであることがわかっている。耳鳴りは,耳の病気以外に,高血圧,動脈硬化,糖尿病,ホルモンの異常といった全身の病気の症状として起こることがある。しかしこれらの病気では,血管の異常が生じて内耳への血液の供給の状態が変化したために,内耳の障害が起こり,耳鳴りが生じたと考えられる場合が多い。さらに耳鳴りは,うつ病や神経症の症状として起こることがある。同じ程度の難聴があっても耳鳴りのある人とない人があり,耳鳴りをどの程度苦にするかは人により異なる。これらのことを考えると,耳鳴りは心理的要素によっても大きく影響されるといえる。耳鳴りの治療の原則は,耳鳴りの原因となっている耳の病気を治すことである。急性中耳炎や慢性中耳炎,耳硬化症や耳小骨奇形による難聴(伝音性難聴)は,聴力の回復が可能であり,聴力が正常まで治れば耳鳴りは消失することが多い。しかし内耳や聴神経の障害による難聴(感音性難聴)の多くは,いまのところ治すことができない。したがって,この場合の耳鳴りを止める決定的方法はないため,いわば耳鳴りに影響する他の因子に働きかける治療が行われる。心理面の影響が大きいと考えられる場合には精神安定剤の投与,動脈硬化や高血圧による血液の流れの異常が考えられる場合には血流改善剤の投与といった方法である。また内耳の状態に変化を与える目的で局所麻酔剤を中耳に入れる方法も行われている。雑音を発生させる補聴器と同じ形の器械(マスカーmaskerという)をつけて,耳鳴りを聞こえないようにする方法も使われている。これらの方法で耳鳴りが小さくならない場合には,〈耳鳴りと共に生きる〉,あるいは〈耳鳴りを気にしながら元気に日常生活を送る〉ように心掛けることしかない。
執筆者:

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食の医学館 「耳鳴り」の解説

みみなり【耳鳴り】

《どんな病気か?》


〈健康な人でも起こるが、長引くときは要注意〉
 外では音がしていないのに、耳の中で音を感じる聴覚現象を耳鳴(みみな)り(耳鳴(じめい))と呼びます。耳鳴りは健康な人でもよく感じますが、長く続いたり、めまい、発熱などをともなう場合は、医師の診察が必要です。
 耳鳴りは難聴にともなって起こることも多く、一般に、「キーン」「ピー」などの高音の耳鳴りは内耳(ないじ)や中枢性の病気による場合が多く、「シャー」「ザー」といった低音の耳鳴りは中耳(ちゅうじ)の病気による場合が多いとされています。
 耳鳴りを起こす病気には次のようなものがあります。
・外耳の病気/耳垢栓塞、外耳道炎、外耳道異物など
・中耳の病気/耳管狭窄症、耳硬化症、鼓膜穿孔、急性中耳炎、慢性中耳炎など
・内耳の病気/メニエール病、突発性難聴、騒音性難聴、内耳性難聴、老人性難聴など
・聴神経、中枢聴覚路の病気/聴神経腫瘍、脳出血
・その他/心因性、更年期障害、薬物中毒

《関連する食品》


〈IPA、DHAを含む食品で血液の循環をよくする〉
○栄養成分としての働きから
 耳鳴りの症状がある場合、脳への血流を改善する治療をすると症状が改善されるようです。食事も、血液の循環をよくするIPA(イコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)、ギンコライドといった成分を含む食品をとるようにしましょう。また、血管を正常に保つ働きのあるレシチンも有効です。
 IPAやDHAは魚類の脂肪に多く含まれる脂肪酸で、IPAはイワシ、ハマチ、サバ、サンマなどに、DHAはマグロ、ブリ、サバ、イワシなどに多く含まれています。また、シソ油などα(アルファ)―リノレン酸を含む食品を摂取しても体内でIPAにかわり、IPAを経てさらにDHAも合成されます。
 ギンコライドはギンナンに、レシチンはダイズおよびダイズ製品や卵黄などに多く含まれています。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「耳鳴り」の意味・わかりやすい解説

耳鳴り
みみなり
tinnitus

耳や頭の中に実在する音を聴くことで、耳鳴(じめい)ともいい、通常は幻聴を含まない。聴覚は非常に敏感であり、正常な人でも防音室内や静かな場所では耳鳴りを感じ取る。これを生理的耳鳴りという。耳鳴りは当人だけしか感じ取ることができないものが多く、自覚的耳鳴りという。ときにカチッカチッという音やドキドキというような音が他人にも聞こえることがある。これを他覚的耳鳴りといい、血管の拍動性雑音や耳小骨筋肉の攣縮(れんしゅく)などが原因のことが多い。

 病的な自覚的耳鳴りは、難聴を伴うものが多く、本人はその難聴を自覚していないことも少なくないが、それが進行して治癒しない高度の難聴や生命に関係してくる聴神経腫瘍(しゅよう)の初期症状であることもあるので、とくに注意する必要がある。すべての難聴が耳鳴りの原因になりうるが、とくに多いのは薬剤による難聴をはじめ、老人性難聴、騒音性難聴、外傷性難聴などである。難聴を伴わない耳鳴りでは、耳以外の病変を考慮しなければならない。むし歯、貧血、高血圧、低血圧、頭蓋(とうがい)内血管腫、脳血管障害、敗血症などをはじめ、全身性疾患の一つの症状であることが少なくない。しかし、ときには原因がみつからないこともある。治療は、原因疾患を診断してそれに対する適切な内科的もしくは外科的治療を行うことが肝要である。対症療法としては精神安定剤などが使用されているが、その使用は慎重を要する。

[河村正三]

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百科事典マイペディア 「耳鳴り」の意味・わかりやすい解説

耳鳴り【みみなり】

耳鳴(じめい)とも。外界に音源が存在しないのに音が聞こえる症状。統合失調症精神分裂病)で音や声がはっきり聞こえる幻聴と異なり,一般に難聴に伴う症状で,特にその初期症状として重要。中耳など伝音器の障害によるときは断裂的で低調,内耳や視神経など感音器の障害によるときは持続的で高調のことが多い。中耳炎,内耳炎,メニエール病などの耳疾患のほか,心臓・血管の疾患,糖尿病やホルモンの異常などの全身疾患,婦人科疾患,萎縮(いしゅく)腎などで認められる。

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内科学 第10版 「耳鳴り」の解説

耳鳴り(めまい・耳鳴り)

概念
 音源が身体外部にない状態で音覚が生じる異常な聴感覚を耳鳴りといい,「キーン」,「ジー」といった擬音語が多く,「誰かが悪口を言っている」などの幻聴とは区別される.
病態生理・鑑別診断
 ①他覚的耳鳴りと②自覚的耳鳴りに大別される(表2-51-1).①には筋性耳鳴(筋痙攣による音)や血管性耳鳴(血流による音)がある.②は内耳や蝸牛神経自体の機能的・器質的異常で蝸牛神経が異常興奮して出現する.鑑別診断は耳鳴りの性状や随伴症状を的確に把握し,表に照らして考えれば困難ではない.[山本纊子]

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