カナマイシン(読み)かなまいしん(英語表記)kanamycin

翻訳|kanamycin

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カナマイシン」の意味・わかりやすい解説

カナマイシン
かなまいしん
kanamycin

代表的なアミノグリコシド(アミノ糖)系抗生物質の一つ。日本薬局方名は硫酸カナマイシン。1957年(昭和32)梅沢浜夫らが長野県の土壌中から発見した放線菌ストレプトミセス・カナミセティックスStreptmyces kanamyceticusの培養液中に産生するが、化学的方法による全合成にも成功しており、耐性の理論も確立している。白色ないし黄白色の粉末で、水に溶けやすく、注射剤と内服剤がある。幅広い抗菌力をもち、連鎖球菌とクロストリジウムを除くグラム陽性菌、グラム陰性菌、抗酸菌、放線菌、レプトスピラに有効であるが、真菌、リケッチア、ウイルス、原虫には作用しない。抗結核剤として用いられるほか、グラム陽性菌・陰性菌による気道感染症、尿路感染症、淋菌(りんきん)感染症、細菌性下痢、赤痢などに適用される。消化管からは吸収されず糞便(ふんべん)とともに排出されるので、内服は腸管感染症に限って用いられる。注射による副作用としては第8脳神経(内耳神経)障害や腎(じん)障害があるが、内服の場合は腎不全以外の症例では副作用の心配はない。カナマイシンベースにして、ベカナマイシンジベカシンアミカシンなど、おもにグラム陰性菌の耐性化を受けにくいアミノグリコシド系抗生物質が開発された。

[幸保文治]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カナマイシン」の意味・わかりやすい解説

カナマイシン
kanamycin

放線菌の一種 Streptomyces kanamyceticusの生産するアミノ糖抗生物質。 1957年梅沢浜夫らが分離命名した。カナマイシンA,B,CがありAの硫酸塩実用に供されている。化膿球菌,グラム陰・陽性菌,抗酸性菌に効力があり,注射は主として肺結核,腎および膀胱結核,肺炎,中耳炎,尿路結石などに用いられ,内服は薬剤吸収の問題もあって,腸内細菌症の治療に限られる。副作用として連用による聴力障害がある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報