内科学 第10版 「肢帯型筋ジストロフィ」の解説
肢帯型筋ジストロフィ(筋ジストロフィ)
原因・概念
幼児期~成人期発症,緩徐進行性の疾患で,上肢帯ないし下肢帯,四肢近位筋の筋力低下,筋萎縮を呈する.筋病理でジストロフィ変化を呈し,X染色体劣性以外の遺伝形式を示す.
多数の遺伝子異常が報告されており,常染色体優性遺伝を1型,常染色体劣性遺伝を2型とする.現在1型はA~Gの7型,2型はA~Nの14型が同定され,さらに増えている.現時点で,約60%が遺伝子同定されている.
疫学
有病率はBMDと同程度とみられる. LGMDのなかでは筋細胞膜蛋白dysferlinの遺伝子変異によるLGMD 2 B(約16.5%)と筋細胞内蛋白分解酵素calpain 3の遺伝子変異によるLGMD 2 A(約23%)が多い.三好らにより悪性肢帯型として報告されていた,比較的発症年齢が低く,経過の早い常染色体劣性のケースがLGMD 2 Bに相当する.ほかにLGMD 2 C~Fのsarcoglycan欠損によるものが(図15-21-7C),約10%存在する.欧米ではジストログリカン異常症の報告があるが,わが国では少ない.
病理
筋ジストロフィ変化であるが,壊死・再生は比較的少ない.大小不同が著しく,直径が100 μmをこえる肥大線維をしばしば認める.肥大線維のなかに分割(fiber splitting)を認めることも多い.
筋細胞内の筋原線維間網(intermyofibrillar networks)の乱れ,すなわち,虫食い(moth-eaten),分葉(lobulated),輪状(ring),渦巻き(whorled),と形容される線維が観測される.とくに分葉線維(lobulated fiber)はLGMD 2 B成人症例に特徴的である.
臨床症状
共通点は,傍脊柱筋,上下肢帯・四肢近位筋優位の筋力低下と,緩徐進行性の経過である.
検査成績
血清CK値は軽度から高度の上昇をみる. 筋電図所見は原則的に筋原性の変化を示すが,高振幅MUPが混入することもあり神経原性変化との区別に注意を要する.
診断
各々のタイプを臨床症候のみで診断することは不可能である.代謝性ミオパチー,炎症性ミオパチー,脊髄性筋萎縮症などを筋生検の一般病理所見で鑑別し,ジストロフィンテストによってBMDを鑑別する.その後,それぞれの型についての検索を行う必要がある.[清水輝夫]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報