国指定史跡ガイド 「肥前波佐見陶磁器窯跡」の解説
ひぜんはさみとうじきかまあと【肥前波佐見陶磁器窯跡】
長崎県東彼杵(ひがしそのぎ)郡波佐見町にある窯跡。丘陵が入り組んでいる町内には近世を中心とした窯36基が盆地周囲に分かれて良好な状況で遺存。なかでも、最も古い畑ノ原窯跡(同町村本)は残存長55.4mで、窯室24余りからなる連房式登り窯として、この時期の肥前でも屈指の規模をもつ。そのほか、中尾上(なかおうわ)登り窯跡(中尾)は、全長160mを超える規模で、永尾本(ながおほん)登り窯跡(永尾)は全長155m、青磁を生産した三股(みつのまた)青磁窯跡(三股)と長田山窯跡(井石)などがある。肥前陶磁器は、近世を通じて全国的にもっとも広く流通した焼き物だが、そのなかにあって、波佐見窯は初期の磁器、波佐見青磁と称される独特の青磁や大規模生産による安価な日常容器などを生産しており、大きな歴史的価値を有している。その製品は全国各地に大量に流通し、近世の陶磁器編年の基礎をなすもので、近世の社会・経済を知るうえで重要な資料でもあることから、残存状況が良好な窯跡5基と三股砥石川(といしがわ)陶石採石場跡、大村藩が管理にあたった皿山役所跡(永尾)が、2000年(平成12)に国の史跡に指定された。中尾上登り窯跡へは、JR大村線川棚駅から西肥バス「上中尾」下車、徒歩すぐ。