改訂新版 世界大百科事典 「脈学」の意味・わかりやすい解説
脈学 (みゃくがく)
脈搏の性状は,中国伝統医学で病状の判定と治療法の選択に役立つ情報として特に重視されている症候である。したがって古くから脈搏の性状と病状の関係を研究する分野が存在し,脈書つまり脈についての専門書も著された。脈はさまざまの部位でとることが試みられ,三部九候診,人迎脈口診,寸口診などが行われたが,後世は橈骨(とうこつ)動脈の腕関節部でとる寸口診に落ち着いた。現存する最古の脈書は王叔和の《脈経》で,その後の研究はこれを中心にして展開し,この書に書かれている浮とか緊,沈などの脈搏の形容の多くは現在まで用いられているが,その内容が明らかでないものもある。脈搏は重要な症候であるため,それを覚えやすくするために歌の形にした脈訣も著された。《王叔和脈訣》《崔真人脈訣》などが知られている。脈は経脈とか血脈(血管)を意味することがあり,必ずしもはっきり区別されているとは限らないから,注意を要する。
執筆者:赤堀 昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報