腎盂造影法(読み)じんうぞうえいほう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「腎盂造影法」の意味・わかりやすい解説

腎盂造影法
じんうぞうえいほう

腎盂内を造影剤(ヨード製剤)で満たしてX線撮影を行う方法で、腎盂、尿管膀胱(ぼうこう)、まれには尿道の形状も描出し、それぞれの形態と機能、とくに腎のそれを調べる検査法の一つ。代表的な静脈注射法(排泄(はいせつ)性腎盂造影法)をはじめ、逆行性および経皮性腎盂造影法もある。

(1)静脈注射法 仰臥位(ぎょうがい)で、まず腎・尿管・膀胱を目標とする単純撮影を行い、ついで造影剤(コンレイ400やコンラキシンLなど)を20~40ミリリットル静注し、5分後と15分後にそれぞれ仰臥位と立位、引き続き排尿後立位の計5枚の撮影を行う方法。5分像では腎機能を調べ、15分像ではおもに腎盂の形状、あわせて尿管と膀胱の形状を観察する。また、立位像は尿流障害の有無に、排尿後像は残尿の有無にそれぞれ注目する。腎機能が低下しているときは映像が不明瞭(ふめいりょう)になるため、点滴静注法が行われる。これは100~150ミリリットルの造影剤を点滴静注し、より明瞭な像を得ようとする方法である。

(2)逆行性腎盂造影法 点滴静注法でも腎盂像が得られないときに行われる方法で、膀胱鏡下に尿管口から細長いカテーテルを挿入し、これを通じて造影剤を腎盂内に注入し、撮影を行うと、明瞭な像が得られる。

(3)経皮性腎盂造影法 これは尿管カテーテルが挿入できない場合に行われる方法で、超音波診断法による映像の誘導下に、経皮的に長い針を腎盂内に刺入し、その針を通じて造影剤を注入して撮影を行う。

 これらの方法で得られた腎盂像は、腎の諸疾患を診断するうえで非常に重要であり、とくに腎に発生する腫瘤(しゅりゅう)(腫瘍(しゅよう)や嚢胞(のうほう)など)をはじめ、腎結石腎結核、水腎症、形態異常などの診断上欠くことのできない方法である。また副腎腫瘍など、周囲臓器による圧迫も腎盂像の変形として描出される。さらに、尿管および膀胱の疾患の診断にも有用である。

 なお、造影剤の静注によりヨードショックをおこすことがあるので、事前にテストし、反応のないことを確認する必要がある。

[大越正秋]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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