腎盂(じんう)または腎杯にある尿路結石をいい、腎臓結石ともよばれる。尿路結石は、腎臓から尿中に排泄(はいせつ)される物質が析出してできたもので、普通、腎杯の乳頭部で最初に形成される。これがそのまま腎杯や腎盂内にとどまっている場合が腎結石であり、尿管、膀胱(ぼうこう)、尿道へと下方に落ちてくれば、それぞれ尿管結石、膀胱結石、尿道結石となる。結石成分としてもっとも普通にみられるのはシュウ酸カルシウムで、これとリン酸カルシウムの混合結石がいちばん多い。ついでシュウ酸カルシウムの単独結石のほか、リン酸マグネシウムアンモニウム、尿酸、シスチン結石などがある。直接の成因は、これらの物質が過剰に排泄され、尿が過飽和状態になって結晶が析出することであるが、このほか、尿中にもともと含まれている2、3の結晶形成阻止物質の活性が、なんらかの原因で低下することも成因の一つにあげられている。
カルシウム結石は全体の4分の3を占めており、尿中へのカルシウム排泄を促進させる疾患はすべてこの原因となりうる。上皮小体機能亢進(こうしん)症では血清カルシウムが増加するため、尿中へのカルシウムの排泄が多くなる。また、特発性高カルシウム尿症のように、血清カルシウムは正常でも尿中カルシウム量が増加する場合がある。慢性腸疾患による下痢が続くと、尿中へのシュウ酸の排泄量が増えてシュウ酸カルシウム結石ができやすくなる。リン酸マグネシウムアンモニウム結石は、グラム陰性桿菌(かんきん)であるプロテウス属による慢性の尿路感染症に続発する。これは、菌体がもつ尿素分解酵素によってアンモニアが多量に発生するためで、腎盂や腎杯を鋳型にしたような形状(サンゴ状)となることが多い。尿酸結石は痛風のほかに、健常な人でも肉食指向型で水分の摂取が普段から少なく、尿が酸性に傾きやすい人にもみられる。シスチン結石は、遺伝性疾患であるシスチン尿症というアミノ酸尿症に特有の結石で、尿が酸性になるとシスチンの溶解度が低下してできる。
腎結石の診断は、結石が腎杯内にあるときは血尿でも出ない限り、たいてい痛みがないので知らずにいることが多い。結石が腎杯の峡部に陥入したり腎盂内に移行すると、側腹痛がおこり、肉眼あるいは顕微鏡で観察できる血尿が排出される。大きさや正確な位置、あるいは腎機能への影響は静脈性腎盂造影で明らかにされる。直径が1センチメートル以上ある場合、またそうでなくても発熱を伴ったり、腎機能が著しく損なわれているときは、早期に手術で結石を除去する。小結石の場合は、尿管への下降あるいは自然排石を期待して多量の飲水、運動、ときには排石促進剤を用いるなどの内科的治療でようすをみる。
腎結石は再発率が高く、5年以内に4人に1人は再発するという統計もある。術後ないし排石後は結石成分を分析するとともに、原因疾患をできるだけ究明してその治療も行い、再発防止に努めることがたいせつである。
[松下一男]
腎臓内に生ずる結石で尿路結石の一つである。結石の存在する部位によって,狭義の腎結石や腎盂(じんう)・腎杯結石などに分けられる。結石の大きさは,砂粒くらいのものから,腎盂・腎杯にしっかりとはまり込むほどに大きいものまである。後者を鋳型結石あるいはその形にちなんでサンゴ状結石と呼ぶ。まれに100個以上の結石があることがある。20~30歳代の男性に多く,症状は,結石のある側の腹部の発作的な激しい疼痛(結石疝痛)を特徴とし,悪心や嘔吐をともなうこともある。しかし,痛みは鈍痛程度のものから,まったく無症状でX線検査などで偶然発見されるものもある。血尿があり,ときに肉眼でも明らかなこともあるが,顕微鏡検査でやっと検出される程度の場合が多い。本症の診断は,この血尿とX線検査でつけられる。砂粒くらいの小結石は大部分が自然に排出するため,特別の治療を必要としないが,大きい結石は手術によって摘出しなければならない。腎結石は再発しやすい病気であるため,その原因を追究して適切な予防方法をとるとともに,つねに水分の摂取につとめることで結石の析出を妨げ,その流出をはかることが大切である。
執筆者:上野 精
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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