腎結核 (じんけっかく)
renal tuberculosis
腎臓への結核感染症。大部分が肺結核にひき続いて起こる。肺の結核病巣から結核菌が血流を介して腎臓へ到達するが,逆に腎結核に必ずしも活動性の肺結核がみられるとはかぎらない。肺の病巣は多くの場合,自然治癒しているからである。本症は,かつては泌尿器科領域で多い病気の一つであったが,近年の化学療法の進歩によって,他の結核と同様に著しく減少した。しかし最近でも,高齢者には必ずしもまれではないので注意が必要である。病変が腎臓に限局している初期にはあまり症状はないが,やがて血尿,尿の混濁,腎臓部の疼痛などが起こるようになる。進行すると,結核菌を含む尿の流れに沿って病変は尿管から膀胱に及び,尿管結核や膀胱結核を起こす。このように腎結核は腎臓のみにとどまらず,尿路全体に広がる傾向が強いので,これらを総称して尿路結核と呼ぶ。膀胱に病変が及ぶと,排尿痛,頻尿など膀胱炎の症状がみられ,普通の抗生物質投与ではなかなか治癒せず,何回でも再発するのが特徴である。したがって何回も再発する膀胱炎の場合には,結核の疑いを念頭におくことが大切である。診断は,尿中の結核菌を顕微鏡で発見するか,培養検査で証明すればよい。他の結核と同様に抗結核剤の投与が有効であるが,進行した場合には腎臓の摘出もやむをえないことがある。
執筆者:上野 精
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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腎結核
じんけっかく
腎臓の結核症で、もっぱら肺結核の病巣から二次的に血行感染したものである。多くは片側性で、病側の腎から結核菌を含む軽い膿尿(のうにょう)が排泄(はいせつ)される。したがって、尿に白血球を多数認め、一般細菌の検索を行っても原因菌を同定できない、いわゆる無菌性膿尿の際には本症を疑う必要がある。
初期に著明な血尿が現れることがあるが、多くはとくに自覚症状がないので気づかずに経過する。やがて膀胱(ぼうこう)が侵されると排尿痛や頻尿がみられ、膀胱炎の症状が現れてから診察を初めて受ける患者が多い。現在は優秀な抗結核剤があるので、早期に発見できると患腎を摘除せずに治すことが可能である。化学療法を長く続けても膿尿が消退しない場合は、外科的に患腎の摘除を行う。
[加藤暎一]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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腎結核【じんけっかく】
おもに肺またはリンパ節の結核病巣から血行性に起こる腎臓の結核症。自覚症状はほとんどない。疲れやすさや,微熱などを訴える者もあるが,多くの場合,膀胱結核も発症して膀胱炎症状を呈する。尿中結核菌の証明,腎盂(じんう)造影術所見,尿沈渣(ちんさ)検査などで診断される。病巣が片側での腎だけにあり,荒廃が著しい場合にはその摘出を行うが,両方の腎が冒されている場合は抗結核剤の化学療法を行う。
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
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腎結核
じんけっかく
renal tuberculosis
腎臓の結核感染症で,急性型と慢性型がある。前者は粟粒結核の部分現象,後者は他臓器,ことに呼吸器系の結核が,血行性に感染するもの。病変が腎臓だけの場合は発見されることが少く,大部分は疼痛,頻尿,血尿などの膀胱結核の症状が現れてから発見される。診断および治療は一般の結核症に準じる。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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