改訂新版 世界大百科事典 「自由心霊兄弟団」の意味・わかりやすい解説
自由心霊兄弟団 (じゆうしんれいきょうだいだん)
Brethren of the Free Spirit
ヨーロッパ中世の異端集団。13世紀初頭から15世紀前半にいたるまで,フランス,ドイツ,イタリアなどに頻発した異端説を奉ずる。〈自由心霊〉とは,神との神秘的な合一を果たした宗教的達人が,あらゆる外在的拘束から自由奔放に行為しうると主張されたことにもとづく。しかし,この語は多くの場合,同時代にあっては非難のための他称として用いられ,道徳的逸脱が指標として言いたてられる。集団組織としてはベギン会を当初おもな母体としたとの説があるが,より多様な集団に依拠したとみるのが適当であろう。神秘的合一や秘教的結社の例は,13世紀にもあるが,教会当局によって異端として恐れられるにいたったのは,14世紀初頭,ビエンヌ公会議(1311-12)前後のことであり,同世紀が最盛期であった。しかし,集団間に連合関係はみられず,研究者によっては,〈自由心霊派〉とは,実質をもった集団ではなく,他称としての一般名称であろうと説く者もある。
執筆者:樺山 紘一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報