日本大百科全書(ニッポニカ) 「船乗りシンドバッドの話」の意味・わかりやすい解説
船乗りシンドバッドの話
ふなのりしんどばっどのはなし
アラビアの物語集成『千夜一夜(せんやいちや)物語』のなかでもっともよく知られている作品の一つ。主人公シンドバッドは西暦8世紀ごろのバグダードの商人(ペルシア系)ということになっており、バスラ港を根拠地として東方への冒険旅行を7回行った。〔1〕クジラを島と思って上陸し、海に投げ出される。〔2〕無人島で巨大なルフ鳥を見たが、この鳥を使って死の谷からダイヤを採取する。〔3〕別の島で小人や巨人に襲われるが、その目をつぶして逃げ出す。〔4〕人食い人種につかまり妻とともに葬られたが脱出。〔5〕ある島で海の老人という奇妙な魔物につかまる。〔6〕〔7〕ここには現実の地名サランディーブ(スリランカ)の名が記され、そこで宝石や象牙(ぞうげ)を入手する。現実の航海者の体験と、中世アラブ世界のファンタジーが混ざり合った傑作である。
[矢島文夫]
『前嶋信次訳『アラビアン・ナイト12』(平凡社・東洋文庫)』