軍艦が装備する砲による陸上射撃。もともと「艦隊、敵岸に近接して間接射撃を行ふに当りては、陸上砲台の威力微弱なる方面を選む」(海戦要務令)とされ、あまり重視された戦術ではなかったが、第二次世界大戦のとくに太平洋戦域においては島嶼(とうしょ)争奪が最大の山場となった結果、上陸援護のための艦砲射撃が海軍作戦の不可欠の要素となるに至った。ギルバート諸島攻略に始まり、マーシャル諸島、マリアナ諸島、硫黄(いおう)島、沖縄に続く米軍の進攻作戦には、艦砲による準備射撃と上陸支援がかならず織り込まれている。空襲と違って精確度が高いうえ長期間継続でき弾量も多いので破壊力は大きい。戦後も朝鮮戦争でアメリカのアイオワ級戦艦が艦砲射撃を行い、ベトナム戦争時(1968)にも同級戦艦ニュー・ジャージーが沿岸の砲撃に従事した。フォークランド紛争(1982)や、レバノン紛争(1983)の際にも、イギリス、アメリカが、同様の攻撃を行っている。戦後の軍艦は大口径の艦砲は有しないが、対地攻撃用の巡航ミサイルは艦砲射撃を上回る内陸攻撃兵器であるといえる。
[前田哲男]
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