日本大百科全書(ニッポニカ) 「花道全書」の意味・わかりやすい解説
花道全書
かどうぜんしょ
いけ花伝書で、立花(りっか)と生花(せいか)について述べてある。編者は不明で、1717年(享保2)の伊丹屋新兵衛(いたみやしんべえ)、伊丹屋忠兵衛(ちゅうべえ)版の刊本がある。巻数は、5巻。巻の1は立花、巻の2は草木花葉の遣(つか)いよう、巻の3は花形図解、巻の4および巻の5は生花の心得となっている。編者は立花系統の人と思われるが、転換期の立花に対する反省とともに、新しい投入れ花から生花への動向にも目を向けている。初めて「花道」という題をつけた書として知られているが、「全書」の名のとおり花の秘伝のすべてを公開し、町人の間にも広くもてあそばれるようになったいけ花への啓蒙(けいもう)書としての意図のもとに刊行されたものであることがわかる。
[北條明直]
『華道沿革研究会編『花道古書集成』第2巻(1970・思文閣)』