苛なし(読み)イラナシ

デジタル大辞泉 「苛なし」の意味・読み・例文・類語

いら‐な・し【苛なし】

[形ク]
心が苦しい。心苦しく不安だ。
「悲しけくここに思ひ出―・けくそこに思ひ出」〈・三九六九〉
際だってはなはだしい。
「候ふ人々も―・くなむ泣きあはれがりける」〈大和・一六八〉
大げさだ。事々しい。
文挿に文はさみて、―・くふるまひて、この大臣に奉る」〈大鏡・時平〉
強い。鋭い。
「天の下の―・き軍士いくさなりとも打ち勝ちなむや」〈宇津保藤原の君〉

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精選版 日本国語大辞典 「苛なし」の意味・読み・例文・類語

いら‐な・し【苛】

  1. 〘 形容詞ク活用 〙 ことごとしい、かどだっている、の意を表わす。
  2. 強い。荒い。鋭い。物の状態についていう。
    1. [初出の実例]「夜昼留ることなくいらなうたへがたく嶮しき道を往く」(出典:打聞集(1134頃)鳩摩羅仏盗事)
  3. 大げさである。ことごとしい。わざとらしい。態度動作についていう。
    1. [初出の実例]「この史、文刺に文はさみて、いらなくふるまひて、このおとどにたてまつるとて」(出典:大鏡(12C前)二)
  4. 心苦しい。精神的状態についていう。
    1. [初出の実例]「父公が楚(イラナキ)目は見せじとしたまひし」(出典:東大寺諷誦文平安初期点(830頃))
  5. ひどい、はなはだしい。程度についていう。
    1. [初出の実例]「后の宮もいといたう泣きたまふ、さぶらふ人々もいらなくなむ泣きあはれがりける」(出典:大和物語(947‐957頃)一六八)

苛なしの派生語

いらな‐さ
  1. 〘 名詞 〙

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