改訂新版 世界大百科事典 「英愛条約」の意味・わかりやすい解説
英愛条約 (えいあいじょうやく)
Anglo-Irish Treaty
1921年12月6日に,アイルランド国民議会代表団とイギリス政府代表団の間で調印された条約。1919年1月に始まったアイルランド独立戦争を終結させ(1921年7月休戦),アイルランドがカナダ,オーストラリア,ニュージーランドと同じ自治領の地位をイギリス帝国の中で保持し,アイルランド自由国と称すことなどを定めた。ただし,20年12月に成立したアイルランド統治法に基づきすでに21年6月より発足していた北アイルランド議会はそのまま存続し,北と南の境界は南北各1名の代表とイギリス政府の任命する議長の3者からなる国境委員会で改めて定めることとした。北アイルランドの分離を認めるか否かなど,この条約をめぐってアイルランドでは賛成派と反対派の間で内戦がおこるが,賛成派が勝利をおさめて,22年12月にアイルランド自由国が発足した。国境委員会は24年から協議を開始したが失敗し,結局,イギリス,アイルランド自由国,北アイルランドの3政府協定により,アイルランド統治法に定められた通りとすることになった(1925年12月)。また,この条約によりアイルランド自由国の3海港にイギリス海軍が駐留し,種々の施設も利用していたが,38年7月には撤退した。
執筆者:上野 格
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報