日本大百科全書(ニッポニカ) 「草原土」の意味・わかりやすい解説
草原土
そうげんど
grassland soil
陸上の自然植生を森林、草原、砂漠と大別し、草原植生の下で生成する土壌を総称していう。この観点から森林土との違い、草原土に共通する特性として、次のことがあげられる。草原の卓越する地域の気候は年降水量が少ないか、乾期が長く、樹林の生育に不適当であって、土層を浸透する水の溶解作用が微弱である。ナトリウム塩類は溶脱されるが、カルシウム・マグネシウム塩類は土層内に集積し、石灰集積作用とよぶ土壌生成過程が進む。また草本類の遺体は分解が遅れ、厚い腐植層(A層)が形成されるが、その腐植生成物は弱酸性で無機成分(塩基)の溶脱を促進することがない。
これらの特性は穀類の栽培に好適で、チェルノゼムは草原土の代表として生産性の高い土壌とされ、北アメリカの小麦地帯、ウクライナの穀倉地帯などはいずれもチェルノゼム分布域である。それに隣接する栗色土(くりいろど)もステップ地帯の草原土の一つであるが、降水量がより少なく年による変動も大きいので、灌漑(かんがい)施設が必要とされる。
[浅海重夫・渡邊眞紀子]