日本大百科全書(ニッポニカ) 「チェルノゼム」の意味・わかりやすい解説
チェルノゼム
ちぇるのぜむ
chernozem
黒色土、または黒色草原土ともいう。東ヨーロッパの内陸盆地からウクライナにかけて広く分布し、小麦の栽培に好適な土壌で、語源は黒い土という意味のロシア語である。年降水量が数百ミリメートルの温帯内陸半乾燥地域に対応し、ステップの植生の下で生成する。同種の土壌は同じ気候条件にあるアメリカ合衆国の大平原やアルゼンチンのパンパの草原にも分布している。腐植含有率10%前後の黒色の表土が50センチメートル以上の厚さに発達し、炭酸カルシウムの集積物が顕著で、中性に近い反応を示す肥沃(ひよく)度の高い土壌となっている。ヨーロッパと北アメリカのチェルノゼムは、新生代第四紀氷河時代の形成になるアウトウォッシュプレーンのレスの堆積(たいせき)層を母材としているものが多く、石灰分や腐植分の集積しやすい環境であった。ステップに続くプレーリーの草原地帯にも同類の土壌があるが、降水量がやや多くなるためカルシウムの集積量とその位置が低下し、退位チェルノゼムとよばれる土壌に移行している。また乾燥度のより高い地帯との間では灰色土(腐植の含有率が5%前後に減り、地表付近に石灰集積がおこる)に移行する。
[浅海重夫]