精選版 日本国語大辞典 「菊重ね」の意味・読み・例文・類語
きく‐がさね【菊襲・菊重】
- 〘 名詞 〙
- ① =きく(菊)②《 季語・秋 》
- [初出の実例]「出でたち給ふ御装束、しげ巻の花のやうなるに、唐巻染きくがさね」(出典:御伽草子・御曹子島渡(室町末))
- ② 女房の重袿(かさねうちき)の色目。五衣(いつつぎぬ)の配色の名。蘇芳(すおう)の濃い色から薄い色に配色する蘇芳の匂(におい)を五枚、その下に白を三枚重ねるもの。また、表着(うわぎ)は白、五衣は白、白、薄紫、薄紫、紫、単衣(ひとえ)は朱と重ねて着るもの。あるいは、上が白、中が薄紫と少し濃い紫、下が緑ともいう。秋に着用する装束。菊。
- [初出の実例]「五節の料とて院よりきくかさねのかざみをようと思ふなり」(出典:赤染衛門集(11C中))
- ③ =きくざ(菊座)①
- ④ 陰暦閏(うるう)九月の異称。九月を菊月といい、それを重ねる意。
- [初出の実例]「長月や閏くははる祝ひ月、菊重の祝儀になぞらへ」(出典:浄瑠璃・曾我五人兄弟(1699頃)二)
- ⑤ 菊の花を重ねた模様。
- [初出の実例]「三光のこの差し櫛。物好きなされし菊重(キクガサ)ね」(出典:歌舞伎・東海道四谷怪談(1825)二幕)