ブドウの実や葉のつるを、唐草のモチーフに取り入れた模様。西アジアでは古代からブドウに対する信仰があり、これを不死の生命の象徴とみなしていた。ブドウ模様もこの地方のものがいちばん古く、紀元前9世紀のアッシリアの遺品にこの模様がみられる。これがギリシアに伝わったのは前4世紀ごろで、やがて律動的な唐草形式をとり、ヨーロッパではローマ時代以後、キリスト受難の象徴として、多くの寺院の内部装飾や石棺の装飾に用いられた。
一方、シルク・ロードを東に向かった葡萄唐草は、後漢(ごかん)末から六朝(りくちょう)時代(2~4世紀)に中国に着き、染織・金工・漆芸品などの模様として賞用された。こうした影響を受けて、日本でも飛鳥(あすか)・奈良時代に葡萄唐草が流行した。なかでも法隆寺金堂天蓋(てんがい)(7世紀後半)や薬師寺本尊の台座(8世紀初頭)、東大寺所蔵の染革(そめかわ)(8世紀中ごろ)の葡萄唐草が有名である。この模様は8世紀中ごろ最盛期を迎えるが、以後国風文化の隆盛とともに衰退し、16世紀、南蛮貿易が開始されるまで中断する。日本では葡萄唐草は外来文化の導入期に流行した異国的な模様であったといえよう。
[村元雄]
…またブドウは唐草文様のモティーフに好んで使われている。つるが唐草の主軸となり,左右に房と葉とを配した形が葡萄唐草の基本で,地域や時代によってさまざまな変化をみせる。西アジアでは,パルミュラのベール神殿浮彫のように完熟した房が描かれているものや,ササン朝の銀壺にみられるように茎のカーブの大きさに比べて茎や房が小さいものなどがある。…
※「葡萄唐草」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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