蒸発散位(読み)じょうはつさんい(英語表記)potential evapotranspiration

日本大百科全書(ニッポニカ) 「蒸発散位」の意味・わかりやすい解説

蒸発散位
じょうはつさんい
potential evapotranspiration

短い緑草で地表面を覆われた土壌中に、水分が十分に存在する場合、地表面と植物を通して蒸発または発散する水の量。気温湿度、風などの気象条件で決まると考えられ、最大可能蒸発散量ともいう。1948年、アメリカのソーンスウェートCharles Warren Thornthwaite(1899―1963)がその概念と算出方法を示し、それに基づく水収支気候区分の研究を発表した。測定がむずかしいため、気温から推定する図式考案・実用化されている。イギリスのペンマンHoward Latimer Penman(1909―1984)による可能蒸発量も類似した概念で、浅い水面からの蒸発量を、地表面での正味放射量などを基に物理的に推定する式を導いているが、あまり実用化されていない。

[水越允治・福岡義隆]

『榧根勇著『水文学』(1980・大明堂)』

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世界大百科事典(旧版)内の蒸発散位の言及

【気候区分】より

… a:最暖月の平均気温が22℃以上b:最暖月の平均気温22℃以下で10℃以上の月平均気温をもつ月が5ヵ月以上c:10℃以上の月平均気温をもつ月が1~4ヵ月d:最寒月の平均気温が-38℃以下現実に存在する気候としては,Cfa(温暖湿潤気候),Cfb(西岸海洋性気候),Dwa‐b・Dfa‐b(大陸性混合林気候),Dwc‐d・Dfc‐d(針葉樹林気候)などである。
[その他の方法による気候区分]
 ソーンスウェートは1948年に蒸発散位という概念を設定し,水収支の立場から気候分類を試みた(図2)。蒸発散位とは広域における土壌面や植生からの蒸発と発散のすべてを合計した蒸発散の量で,実験的にも理論上でも気温に比例することが明らかなので,月平均気温から毎月の蒸発散位を求める方法が工夫されている。…

【気候示数】より

…なお,A.マイヤーは降水量と蒸発の主要因子である飽差との比をとっている。
[湿潤示数moisture index]
 水収支の観点からすると,気候の乾湿を示すには降水量と,十分に水を供給したときに地表から蒸発散する最大可能量(蒸発散位,最大可能蒸発散量)との差である水過剰量,水不足量を求めることがより合理的である。つまり降水量が蒸発散位より多ければ水過剰,その逆の場合には水不足となる。…

※「蒸発散位」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」