空気の温度のこと。室内の気温、屋外の気温、上空の気温などのように場所を示して表される。気象観測で単に気温というときは、屋外で、地上1.2~1.5メートルの高さで測った空気の温度をさす。気温は空気の物理的状態を決めるために必要であるという学問的な理由のほかに、寒暖の程度は人間の生活にも植物の生育にも大きな影響をもつので重要な環境要素として取り扱われる。
[大田正次]
普通、度C(℃)を用いるが、国によっては度F()が用いられている。度Cの目盛は、1気圧の下で水の氷点を0℃、沸点を100℃としたものである。度Fでは氷点が32、沸点が212となる。温度目盛にはそのほかケルビン温度目盛(または絶対温度目盛)があり、K(またはA)と書く。度CとKとの関係は
℃=K-273.15である。
[大田正次]
気温の測定に古くから用いられているのは水銀温度計である。水銀温度計は構造が単純で、小形で安価であるばかりでなく、示度の狂いが少ないので、日常の使用には優れている。水銀温度計にはガラス棒に直接目盛りを刻んだ棒状温度計のほか、ガラス管が二重になったフース型温度計や、板にガラス棒をつけた板付温度計(ルサフォード型)がある。一般の測定用には板付の温度計で十分である。なお水銀は零下39℃で凝固するので、寒地でこのような低温になる所では、水銀のかわりにアルコールの入った温度計を用いる。エチルアルコールの凝固点は零下117℃である。
水銀温度計を用いて屋外の気温を測るには百葉箱(ひゃくようばこ)を用い、その中に吊(つ)り下げるのがいちばん簡単である。百葉箱は温度計の感部に太陽光線が直接当たるのを防ぐほか、雨や雪がかかるのを防ぐ。温度計の感部の位置は地上から測って1.2~1.5メートルに置く。百葉箱を用いない場合には、水銀温度計を小形の金属製の筒に収め、小形のファンで筒の中に風を通す仕組みの携帯用の通風温度計を用いるのがよい。気象庁が気象観測に用いている温度計は、水銀温度計のかわりに白金抵抗温度計を金属製の通風筒に取り付けたもので、これを露場(ろじょう)に設置し、室内で記録する仕組みとなっている。この場合の感部の高さは地上1.2~1.5メートルである。
ある時間内、たとえば1日の間の最高気温を知るためには最高温度計を用いると便利である。この温度計の仕組みは体温計と似ていて、気温が上がるとき感部から押し出された水銀は、気温が下がっても感部に戻らないので、水銀糸の頭の目盛を読めば最高温度がわかる。この温度計の示度を元に戻すには、体温計の示度を下げるときの要領で、温度計を強く振って下げるとよい。またある時間内の最低温度を知るには最低温度計を用いるとよい。これはアルコール温度計のアルコール糸の中に、細い色ガラスの指標を封入したもので、気温が下がるとガラス指標はアルコール糸の一端の表面張力で引き下げられるが、気温が上がると、指標は置き去りにされる仕組みである。最低温度計は百葉箱内にほぼ水平に置く。指標を元に戻すには、指標を見ながら静かに傾けてやればよい。
上空の気温を測るには鉄塔を利用し、白金抵抗温度計などを取り付けて測る。鉄塔の届かない高さの気温は係留気球やラジオゾンデを利用してサーミスターなどの温度センサーを取り付けて測定する。
[大田正次]
気温は上空に昇るほど一般に低くなる。ラジオゾンデなどで上空の気温を測った結果によると、世界中を平均して100メートル昇ると0.65℃低くなる。しかし、日や時刻により、また高さによって上空の気温はかなり複雑な変わり方を示す。たとえば人間生活に関係の深い地上100メートル以下では、夜間から早朝にかけて気温の逆転がよく現れる。一方、日中には著しい気温の逓減(ていげん)、つまり上にいくほど気温が低くなる現象が現れやすい。これは100メートルにつき0.65℃減るという平均的な状態から著しくかけ離れた現象である。また、地上12キロメートル以上になると成層圏となり、つねに逆転状態になるが、この高さは季節や緯度によりおよそ10~18キロメートルくらいに変わる。
[大田正次]
気温の逆転は異常現象のような語感をもっているが、けっして珍しい現象ではない。夏冬を通して天気のよい日の早朝には地面が冷えて気温が下がり、地上100~200メートルの高さまで気温が逆転するのが普通である。この場合には逆転が地面付近から始まるので接地逆転という。接地逆転は1年のうち約30%すなわち約100日はおこる。接地逆転は夜間から早朝にかけて地面が放射によって熱を失い冷えるためにおこるので、放射性の逆転ともよばれる。一方、天気のよい日の日中などの地面付近は逓減状態であるが、地上数百メートルから上が逆転していることがある。前者に対してこれを上層逆転とよぶ。この上層逆転は移動性の高気圧内でよく発生し、上空の空気が高気圧内で沈降するためにおこるとみなされるので、沈降性逆転ともよぶ。一般にこれらの逆転層の中では大気中のちりなどの拡散がおこりにくい。接地逆転や上層逆転の現象は大気汚染物質の拡散の仕方を左右するので、公害対策上関心がもたれている。
[大田正次]
ある場所で気温を測定した結果をみると、気温は時々刻々に変わっていることがわかる。一般に、日中は高く早朝は低い。しかし春先に低気圧が通り過ぎると、強い南風が吹いてその時刻に気温は著しく上昇する。また冬に高気圧が張り出して強い北風が吹いてくると気温は著しく下がる。何十年もの長い年月に測った気温の値を1日の時刻ごとに平均してみると、気温の日変の型がわかる。東京の例では、夏と冬とでは多少違うが、日中の13~14時ごろもっとも高く、早朝の5~6時ごろがもっとも低い。次に月ごとに気温の値を平均すると、1~12月までの間の年変化を知ることができる。東京では8月(26.7℃)にもっとも高く、1月(4.1℃)にもっとも低い。その差は約23℃である。
[大田正次]
全世界の気象観測所の気温の長年の値を集め、1月の各地の平均気温を求めて地図上に記入すると、全世界の1月の気温の分布がわかる。同様にして7月の気温分布を求めることができる。これらの分布をみると、1月には低温域は大陸の中心からやや東寄りに現れ、7月には高温域は大陸の中心付近に現れる傾向がある。
[大田正次]
われわれが身体で感じる暑さ寒さの体感は、おもに気温の高低に左右される。温度計のことを昔は寒暖計とよんでいたくらいである。しかし体感には気温のほか、風速や湿度が多少影響する。たとえば、寒風の中では風速が毎秒1メートル増えるごとに気温が1℃だけ低くなったように感じ、夏の暑いときには、湿度が10%高くなると気温も1℃だけ高くなったように感じるという研究もある。体感に関連した用語に真夏日(熱帯日)がある。真夏日はその日の最高気温が30℃以上の日、夏日は最高気温が25℃以上の日、真冬日は最高気温が0℃未満の日、冬日は最低気温が0℃未満の日をいう。東京の例では1年間で真夏日は平均45日、夏日106日、真冬日0日、冬日は28日となる。札幌では真夏日7日、夏日46日、真冬日51日、冬日139日、南の那覇では真夏日78日、夏日197日、真冬日0日、冬日0日となっている。夏になるとよく聞かれる不快指数というのは、気温を主として湿度を多少考慮に入れた指数であるが、6月から9月までの東京を例にとると、「やや暑い」が74日、「暑い」が37日、「暑くてたまらない」が1日となっていて、「暑い」日数が真夏日日数に近いものとなっている。
[大田正次]
『高橋浩一郎著『日本の天気』(1963・岩波新書)』▽『大田正次・篠原武次著『実地応用のための気象観測技術』改訂(1967・地人書館)』▽『大野義輝著『日本のお天気』(1970・大蔵省印刷局)』▽『気象庁編『日本気候図』1980年版(1984・日本気象協会)』▽『東京天文台編『理科年表』1985年版(1984・丸善)』
大気の温度を気温といい,地上の気温(単に気温ともいう)は地表面上1.25~2.0mの高さの外気の温度をいう。このくらいの高さになると高さに対する温度変化は地表面付近に比べてきわめて小さい。地球上の気温は大部分の地域が-20℃から+25℃の間にあり,種々の動植物の生存に最適の条件を与えている。一方,他の惑星の気温は水星,金星のように400℃以上の高温であったり,木星,土星のように-100℃以下の低温であるため生物の生存には不適である。火星の気温は昼間は-20℃程度であるが,夜間は-120℃くらいに下がるため,やはり生物の生存には不適とみられる。このように地球だけが生物に好条件の気温を与えているのは,まず第1に太陽からの距離が他の惑星に比べて最適の位置にあり,このため太陽からの日射量が生物に適した温度を与えていること,第2に地球大気中には多量の水蒸気,雲粒が含まれているため,昼間は日射を和らげ地面の昇温を弱めるとともに夜間は逆に地面からの放射冷却を弱める保温作用があり,昼夜の温度差を小さくしていることによる(他の惑星大気は水蒸気をまったく含まないか含んでいてもごく微量である)。
気温は太陽の高度による水平面日射量の変化に影響されるため,一般に低緯度の所ほど高く,高緯度の所ほど低い。しかし,同じ緯度でも大陸では気温の変化が激しいが,海洋では少なく,さらに陸地の地形,山岳などの影響や海流の影響もあって,気温の分布はかなり複雑になっている。
気温は地表面付近を除けば一般に高度とともに下がり,高度が100m増すと0.5~0.6℃低下する。しかし,場合によると上層の温度が高くなることもあり,このような気層を気温の逆転層といっている。高度12km付近には対流圏界面があり,これより上では気温はしばらくほぼ一定となり,その後逆に高度とともに気温が上昇して高度50km付近(成層圏界面)で極大となり,その後高度80km付近(中間圏界面)までは気温が下がり,これより再び昇温しはじめ,高度300km付近では約1200℃になり,これより上層の温度変化はきわめて少ない。50km付近の昇温は,日射によって生成されたオゾンが日射エネルギーの一部を吸収するために生ずる。
→大気
普通,気温は明け方に最低気温となり,午後2時ころ最高気温が現れる。このような1日中の変化を気温の日変化といい,1日の最高気温と最低気温の差を日較差という。雨や曇の日は晴の日より日較差が小さい。日中気温が上がるのは日射がまず地面に吸収されて昇温し,その後熱対流や熱伝導によって地面付近の空気が間接的に暖められることがおもな原因である。一方,夜間の気温降下はおもに地面および大気の放射冷却によって生ずる。
気温は太陽高度の季節変化に伴い年変化する。熱帯地方の気温の年変化は小さいが,温帯地方では四季の変化が明瞭になる。変化の度合は一般に内陸部で大きく海洋で小さい。高緯度になるに従って低温の期間が長くなり年変化も小さくなる傾向がある。北半球では最も気温が上がるのは7月か8月で,最も下がるのは1月か2月である。南半球では夏と冬が逆になる。日射は夏至のころ最も強くなるが,地面付近の空気が暖まるのに時間がかかるため約1ヵ月おくれて気温の最高がでる。冬至と最低気温の時期のずれも同じ理由による。
一般に用いられている気温の測器には水銀温度計,最高最低温度計などがある。気温の標準的な観測には隔測温湿度計,通風乾湿計などが用いられる。隔測温湿度計は地表から約1.5m上に日射の影響を除くための通風筒を設置し,この中に気温感部を入れ筒の下方から外気を吸入して測定する。気温感部は雲母などの薄板に細い白金線を巻いたもので,温度によるこの白金線の電気抵抗の変化を導線で接続し,離れた観測室内で測定して気温を求めることができるようになっている。通風乾湿計は乾球と湿球の2本の水銀温度計と,その感部に通風するためのファンおよび通風管から構成され,任意の場所で測定できる携帯型のものもある。気温の測定はその乾球の目盛を読みとればよい。このほか,熱膨張率の異なる2種の金属板を合わせて温度による変形を利用したバイメタル温度計,半導体の電気抵抗の温度による変化を利用したサーミスター温度計,局部的な応答の速い測定に適した熱電対温度計,遠方から赤外放射線のエネルギーを測定して得られる放射温度計などがある。
執筆者:岡村 存
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 パラグライダー用語辞典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
(饒村曜 和歌山気象台長 / 宮澤清治 NHK放送用語委員会専門委員 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
… 気候は大気の総合状態であるが,形や大きさを直接測ることはできない。そこで通常は気候を気象測器で観測できる,日射,気温,湿度,降水量,気圧,風などの気候要素に分けて,それぞれの長年の平均値をとり,それらを組み合わせるのが普通の方法である。平均をする期間はあまり長くとると,その間連続して観測資料がある地点が少なくなるばかりでなく,気候変動の影響が加わるので,世界気象機関(WMO)の取決めにしたがって,現在は国内については1951年から80年までの30年間を用いている。…
…他の一つは気候学的区分(気候の成因や,気候分布の原理に基づく分類)で,上記の環境的・経験的方法が気候の結果を利用した古典的なものであるのに対し,気候の原因による近代的方法であるといえる。気候学的方法には,平均気温や平均降水量などに立脚した平均値気候学と,気団論や前線論などによる動気候学,総観気候学の立場からの方法とがあり,その後,エネルギー気候分類も取り入れられている。 気候区分に最も多く用いられる気候要素は気温で,古代ギリシアのアリストテレスも気温の高低で気候を分類している。…
※「気温」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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