日本大百科全書(ニッポニカ) 「薄板ガラス」の意味・わかりやすい解説
薄板ガラス
うすいたがらす
thin glass sheet
厚さの薄い板状のガラス。とくに厚さによる定義はないが、一般的には、0.4ミリメートル程度以下の厚さのガラスを薄板ガラスとよんでいる。薄板ガラスの製造方法としては、通常、フュージョン法やリドロー法などのダウンドロー法が用いられ、数十マイクロメートルの厚さの超薄板ガラスが開発されている。フュージョン法は、溶融ガラスを、フュージョンパイプ(樋状パイプ)に供給し、両側にあふれ出たガラスをあわせながら下方に引っ張り、板状に成形する方法であり、リドロー法は、一度板状に成形されたガラスを再加熱して、引っ張りながらより薄いガラス板を成型する方法である。ダウンドロー法とは、溶融したガラスを垂直方向に引っ張りながら板状に成形する方法で、水平方向に引っ張りながら成形するフロート法などに対比させて表現される用語である。一方、フロート法(溶融ガラスを、溶融金属スズで満たされたフロートバス(スズ浴槽)に供給し、スズ上に浮かんだガラスを水平方向に引っ張りながら板状に成形する方法)でも0.1ミリメートル厚程度のガラスがつくられるようになった。また、比較的厚いガラスをフッ化水素酸によって薄くすることによって薄板ガラスがつくられることもある。超薄板ガラスは、ガラスフィルムともよばれ、グラスファイバーのように曲げることができるため、フレキシブル基板として期待されている。超薄板ガラスは、樹脂フィルムと異なり、優れたガスバリヤ性(水分や空気を通さない能力)、耐熱性、耐候性(屋外で自然環境変化に耐える性質)を有するという特徴がある。
[伊藤節郎]