日本大百科全書(ニッポニカ) 「薪水供与令」の意味・わかりやすい解説
薪水供与令
しんすいきょうよれい
江戸末期、異国船の来航にあたって薪水・食料などの供与を許した幕府の法令。1842年(天保13)7月発令。18世紀末より、ロシア、アメリカ、イギリスなどの船が日本近海に出没するようになったが、当初幕府は通商は認めないものの、漂着船には薪水・食料などを与えて帰帆を促すという穏便な政策をとっていた。その後、対英感情の悪化、イギリス捕鯨船の頻繁な接近などのため、幕府は1825年(文政8)異国船打払令を出して、日本沿岸に近づく異国船は有無に及ばず打ち払うとの方針に転じた。しかしその後モリソン号事件(1837)を機に打払令に対する批判が起こり、またアヘン戦争(1840~42)で清(しん)国が敗退した事実を知ったため、同令を停止し、旧方針にのっとり異国船に薪水その他を供与するように改めた。
[多田 実]
『箭内健次編『通航一覧 続輯』全5巻(1967・清文堂出版)』